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岩手山に積もる

岩手山に積もる

センニンソウ

詩、「東岩手火山」は詩集「春と修羅」に収められた長詩です。花巻農学校の生徒を引率して登山し、山頂をなす外輪山の一角から最後の登頂をすべく待機していた時に目の前に広がる様子を綴ったものです。

月は水銀 後夜ごやの喪主もしゆ
火山礫れきは夜よるの沈澱ちんでん
火口の巨おほきなゑぐりを見ては
たれもみんな愕くはずだ
(風としづけさ)
いま漂着へうちやくする薬師外輪山ぐわいりんざん
頂上の石標もある
(中略)
二十五日の月のあかりに照らされて
薬師火口の外輪山をあるくとき
わたくしは地球の華族である
蛋白石の雲は遥にたゝへ
オリオン 金牛 もろもろの星座
澄み切り澄みわたつて
瞬きさへもすくなく
わたくしの額の上にかがやき
さうだ オリオンの右肩から
ほんたうに鋼青の壮麗が
ふるへて私にやつて来る

三つの提灯は夢の火口原の
白いとこまで降りてゐる
((雪ですか 雪ぢやないでせう))
困つたやうに返事してゐるのは
雪でなく 仙人草のくさむらなのだ
(後略)

センニンソウ(仙人草、学名 Clematis terniflora)はキンポウゲ科センニンソウ属の多年草です。
大正十一年九月十八日に制作されたこの詩に描写される岩手山には、積もる雪と見まがうばかりにセンニンソウが咲いていたのでしょう。

宮澤賢治 詩・春と修羅 東岩手火山

写真:wikipedia~センニンソウ

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