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ススキの舞台

ススキの舞台

ススキの原

鹿踊(ししおどり、しかおどり)は、岩手県、宮城県、そして愛媛県宇和島市周辺で受け継がれている伝統舞踊です。宮澤賢治の故郷、岩手県花巻市の花巻まつりでもお目見えします。童話「鹿踊りのはじまり」はその起源を題材にして書かれた作品です。

そのとき西のぎらぎらのちぢれた雲のあいだから、夕陽は赤くななめに苔の野原に注ぎ、すすきはみんな白い火のようにゆれて光りました。わたくしが疲てそこに睡りますと、ざあざあ吹いていた風が、だんだん人のことばにきこえ、やがてそれは、いま北上の山の方や、野原に行われていた鹿踊りの、ほんとうの精神を語りました。
(中略)
それはたしかに鹿のけはいがしたのです。
鹿が少くても五六疋ぴき、湿っぽいはなづらをずうっと延ばして、しずかに歩いているらしいのでした。
嘉十はすすきに触ないように気を付けながら、爪立てをして、そっと苔を踏んでそっちの方へ行きました。
たしかに鹿はさっきの栃の団子にやってきたのでした。
「はあ、鹿等あ、すぐに来たもな。」と嘉十は咽喉の中で、笑いながらつぶやきました。そしてからだをかがめて、そろりそろりと、そっちに近よって行きました。一むらのすすきの陰から、嘉十はちょっと顔をだして、びっくりしてまたひっ込めました。六疋ばかりの鹿が、さっきの芝原を、ぐるぐるぐるぐる環になって廻っているのでした。

作品では、鹿踊りの起源を「人間が鹿の踊る様をまねた」ものだという事になっています。民俗学的にはおそらくその起源は諸説あるかと思われますし、賢治自身もそのような事はおそらく知っていたでしょう。晴れ渡る秋晴れの下、茫漠と広がるススキの原の中で繰り広げられる鹿達の踊り。見とれてしまうのは、嘉十だけではないのでしょう。

宮澤賢治 童話・鹿踊りのはじまり
wikipedia~鹿踊りのはじまり

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