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岩手山登山

岩手山登山

キキョウ

岩手県の代名詞・標高2,038mの岩手山は古来より「おやまがけ」と呼ばれる、山岳信仰の対象としての参拝登山が主流になっていました。明治に入ると、スポーツ、高山植物鑑賞といった「楽しむ登山」目的で岩手山に登る登山者が増加しました。中でも「柳沢ルート」は東北本線滝沢駅(現:IGRいわて銀河鉄道『滝沢駅』)から、柳沢の岩手山神社社務所小屋で仮眠御をとり、夜中に出発し山頂でご来光を拝む、といったような「柳沢ルート」が当時の岩手山登山の主流でした。賢治もまた、岩手山に魅せられた一人として何度もこのルートを登りました。詩・柳沢はその様子を歌っています。

前略(ああ、もう明るくなって来た。空が明るくなって来た。きれいだなあ。おい。)深い鋼青から柔らかな桔梗、それからうるはしい天の瑠璃、それからけむりに目を瞑るとな、やはりはがねの空が眼の前一面にこめてその中にるりいろのくの字が沢山沢山光ってうごいてゐるよ。くの字が光ってうご……。
もうすっかり暁だ。
(お握りを焼かう。はあ、ゆふべはどうも。途中で迷って。雨は降るし。)
(さあ日が出たやうだ。行かう行かう。さあ飛び出すんだよ。おゝ、立派、この立派。ふう。)
日の光は琥珀の波。新らしく置かれたみねの雪。赤々燃える谷のいろ。黄葉をふるはす白樺の木。苔瑪瑙。
(おゝい。あんまり馳かけるな。とまれ。とまれぇ。おゝい。止れったら。待てったら。)
うん。朝の怒りは新鮮だ。炭酸水だ。
鈴蘭の葉は熟して黄色に枯れその実は兎うさぎの赤めだま。そしてこれは今朝あけ方の菓子の錫紙。光ってゐる。

キキョウ(桔梗、Platycodon grandiflorus)はキキョウ科の多年性草本植物で、秋の七草のひとつです。早暁の山の新鮮な空気が伝わります。

宮澤賢治 詩・柳沢
写真:wikipedia~キキョウ

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