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ブリューベル揺れる

ブリューベル揺れる

ツリガネニンジン

あやしい鉄の隈取や
数の苔から彩られ
また捕虜岩(ゼノリス)の浮彫と
石絨の神経懸ける
この山巓の岩組を
雲がきれぎれ叫んで飛べば
露はひかってこぼれ
釣鐘人参(ブリューベル)のいちいちの鐘もふるへる

賢治の代表的な詩集「春と修羅 第二集」にある
「早池峰山巓」は題のとおり早池峰山の山頂を歌ったものです。

早池峰山は全山、蛇紋岩で出来ているため特異な植生で知られています。
蛇紋岩はマグネシウムを多量に含むため、植物の水分吸収能力を低下
させるとも言われています。そのため、このような性質の土壌に耐えうる
植物のみが生える貧弱な植生になりますが、逆に固有種が生き残ることなります。
中でもハヤチネウスユキソウは有名ですね。

また、賢治は地質学を学んでいたことから、蛇紋岩に含まれるうる
イリドスミンという鉱物にイリジュムが含まれることを発見し
岩手県で初めてその鉱山開発を考えましたが、実現する前に亡くなって
しまったため企業化には至りませんでした。

詩は早池峰山の特徴を歌いつつ
そこに生る植物たちを描写してゆきます。

ツリガネニンジン(釣鐘人参、学名: Adenophora triphylla var. japonica )はキキョウ科ツリガネニンジン属の多年草です。賢治はこの釣鐘人参にブリューベルというルビを付けています。
ブリューベルすなわち、Blue Bellは英語で言えば、釣鐘水仙を指します。
ツリガネニンジンはLady Bellsと呼ばれますが、ここでは青い釣鐘状の花
全般という意味で使っているのでしょう。

早池峰山の山巓を吹き渡る風に
揺れる釣鐘は何を告げているのでしょうか。
小さな鐘音が聞こえてきそうです。

宮澤賢治 春と修羅 第二集 181 早池峰山巓
写真:wikipedia~ツリガネニンジン

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