第42回ーカタクリの群落を描く
第42回ーカタクリの群落を描く
梅の花が咲き始める頃、
里山のホッコリした斜面に、カタクリは花を咲かせます。
カタクリは小さな株のうちは、花を咲かせません。
葉だけで何年か過ごした後、花を咲かせるのです。
地面の中での努力が、春に美しい花を咲かせるのです。
今回は、地面の描き方にもチャレンジしてみましょう。
欲張らないのがポイント
まず、外で描く時のポイントです。
どうしても花を目の前にすると、計画が壮大になり、あれもこれも入れたくなってしまいます。でも欲張ってはいけません。外で描くのは初めてなら、まずは主役を1本だけ描き、下草で少しゴージャスにしてみましょう。
屋外で描くときは、小さく作品から練習するのがポイントです。
この1/2から1/3ぐらいの大きさで十分素敵な作品になるでしょう。
見えるものはすべて描く
私の作品制作の場合は、デッサンで見えるものすべてを描いてしまいます。
そのため、今回の作品の場合は、カタクリの下にある枯葉や下草もすべてデッサンの段階で描き込みます。込み入って分かりにくい時は、少し鉛筆で陰影を入れておくと、彩色時に悩まずに済むでしょう(手順1)。
地面の下地はいろいろな色で
彩色は地面から始めます。空間上で下か奥の方向...つまり「奥から描く」と遠近がついてくるからです。その際、なるべくたくさんの色を使って、淡く下塗りをします。なぜなら複雑な枯葉や下草の色を、それぞれ別の色で彩色しておくと、込み入った下草の彩色が進めやすくなるからです(手順2)
デッサンの考え方に戻る
ここで、手順1のデッサンの考え方に戻ります。1では陰影を鉛筆で入れたと思いますが、その陰影の場所にさらに絵の具で陰影を彩色します。
このときはアイボリーブラックなども配合して影の色をしっかり彩色します。(手順3)
ロンドのように
そして、手順2と3の作業を繰り返しながら、下草を彩色していきます。
この段階で、ただの下草ではなくキクザキイチゲの幼葉、ユキワリソウ、モミジの枯葉など、何が落ちているのかが分かる様に心がけます。
抽象的な表現になりますが、下草の仕上がり具合が4~6割ぐらいになってきたら、次の作業に入りましょう(手順4)
カタクリの彩色
下草の終わりのめどがついたところでいよいよ本題、カタクリの彩色に入ります。カタクリの花や葉には美しい斑が入っています。たまに斑無しの葉や白い花などもありますが、今回は典型的な個体を描いています。
透明水彩の技法の基本は「明度の高い色から彩色すること」です。
まず、斑入りの葉は斑無の葉と考えて彩色します(手順5)。
斑の描き方
「一番明るいところの色で塗りはじめる」これはどんな場合でも水彩画の基本です。斑は一番明るく見える場所の色を作り、まず模様だけを平塗りで描きます(手順6)。
その後、影のある部分の模様を少しずつ重ねて彩色していきます。
こうすることで葉の陰影の上に自然に模様が乗っているように見えます(手順7)。
この段階に入ったら、少し描いたら手を休め、作品を遠くから眺めるようにします。奥にある植物を少し早めに仕上げましょう。そうすることで明るく美しい作品に仕上がります(手順8)。
最後に
ボタニカルアートは、図鑑用のイラストとは違います。しかし、ただの花の絵でもナチュラルイラストレーションでもありません。
私の場合は必ず、図鑑用のイラストで要求される要素をなるべく自然に画面に取り入れるよう工夫しています。
今回はデンプンをたくわえた球根を描く事はできませんでしたが、それ以外の要素はなるべく盛り込みました。