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奇跡のバラの実

奇跡のバラの実

画像の説明
清夫は今日も、森の中のあき地にばらの実をとりに行きました。
そして一足冷たい森の中にはひりますと、つぐみがすぐ飛んで来て言ひました。
「清夫さん。今日もお薬取りですか。
お母さんは どうですか。
ばらの実は まだありますか。」
清夫は笑って、
「いや、つぐみ、お早う。」と言ひながら其処そこを通りました。
(中略)
よしきりが林の向ふの沼に行かうとして清夫の頭の上を飛びながら、
「清夫さん清夫さん。まだですか。まだですか。まだまだまだまだまぁだ。」と言って通りました。
清夫は汗をポタポタこぼしながら、一生けん命とりました。いつまでたっても籠の底はかくれません。たうとうすっかりつかれてしまって、ぼんやりと立ちながら、一つぶのばらの実を唇くちびるにあてました。
するとどうでせう。唇がピリッとしてからだがブルブルッとふるひ、何かきれいな流れが頭から手から足まで、すっかり洗ってしまったやう、何とも云へずすがすがしい気分になりました。空まではっきり青くなり、草の下の小さな苔こけまではっきり見えるやうに思ひました。
それに今まで聞えなかったかすかな音もみんなはっきりわかり、いろいろの木のいろいろな匂にほひまで、実に一一手にとるやうです。おどろいて手にもったその一つぶのばらの実を見ましたら、それは雨の雫しづくのやうにきれいに光ってすきとほってゐるのでした。
(後略)

童話「よく利く薬とえらい薬」は病気の母親の為にバラの実を摘んでいた清夫少年が見つける「特別なバラの実」が、少年の母親の病気を治した事を聞きつけた、大三という傲慢な男が自らの身勝手な欲を満たすためにそのバラの実を探しますが、悲惨な結末が待っているお話です。

バラの実は英名でローズヒップといい、ビタミンが豊富なハーブとして現在でも様々な用途で使われています。賢治が生きた時代でも大切にされていたのですね。

宮澤賢治 童話・よく利く薬とえらい薬
wikipedia~ローズヒップ

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