ボタニカルアートを描く人のための専門情報サイト

第7回ー植物群を屋外で描く

第7回ー植物群を屋外で描く

礼文林道への道

トレッキングシーズン到来!!
屋外で見た植物をその場で描く事が出来たら....
誰でも一度は思った事があるはず。
今回は屋外で描くための基礎知識を私流ではありますが、
ご紹介致します。
画像をクリックして大きな画像をご覧いただけます。









疑問は万国共通なわけで...

すこし前の話になりますが、2003年に英国王立園芸協会のフラワーショーに「礼文島の春の花」を発表した際、その描き方について沢山の質問を受けました。
質問に内容は、「現場でどれくらい描くのか?」「植生や色などの記録はどうとるのか?」「下草の描きかたは?」等々....おそらく皆さんも同じ疑問を持つのではないでしょうか?まず最初に申し上げないといけないことは、「いきなり屋外、ましてや旅先で描くのは大変リスクのあること」だという事です。ですので、まず植物園や自宅の庭など、時間がたっぷりととれ、気象条件の変化に左右されにくい、安心してスケッチブックを広げられる場所で練習をしてから臨まれることをお勧めいたします。

まずは自分の手のスピードを知る

皆さんはご自分の描くスピードをご存知でしょうか?例えば旅先で10時間の自由時間があるとします。6時間で歩けるルートをトレッキングする場合、絵を描く時間は4時間とれるわけですが、天候の変化や花の咲き具合を見て、良い個体を探しながら、どこで絵を描くのか決めるのは大変難しい事です。特に自分の描く速さを知っていないと、絵を中断しなくていけなくなってしまったりします。私は旅先で描く時、描く個体を決めたら、まず「30分!」とか「1時間半!」とか時間を宣言します。そして常に時間を気にしながら描くように心掛けています。そうしていると自然に手も速くなりますし、自分はこれくらい時間をかけるとこの程度の絵が描けるという事がわかるようになります。そうすれば、絵を描かない人と出かけても、「30分したら戻ってきて!」と言って、気兼ねなくその場にすわりこんで絵が描けるようになります。

画面サイズは体力に比例する...!?

私は基本的に転写して描き事はしません。つまりぶっつけ本番で描きますので、用紙の大きさは自分が背負って歩ける大きさになります。私の体力だとF10ぐらいが限度でしょうか。いつも行く礼文島は風が強いので、あまり大きなスケッチブックを背負ってあるくと、強風にあおられ、「タコ」になり、飛ばされそうになります。ですから、長期旅行の際は、大、中、小のスケッチブックを持っていき、天候やルートに合わせて大きさを選んで、必要のない道具類は宿に置いておくようにしています。

記憶より記録

現地ではHBの鉛筆であたり線と形をデッサンして、アトリエに戻ってからH以上の硬い鉛筆を使用して清書と彩色をおこなっています。ですから色、植生、形態の資料写真は膨大な量になります。ただ、デッサンの清書に関してはデッサンの観察不足、描き込み不足を防ぐため、慣れるまでは清書まで現地で完成させてしまうことをオススメ致します。私の場合、色の記憶力に関しては、昔に職業柄かなり自信があるので写真のみですが、通常は色のメモを現地か宿に戻った段階でとる方が良いでしょう。メモの取り方は人それぞれですが、携帯用絵の具セットを使ったり、絵の具をの名前で書いたり(例:サップグリーン+プルシャンブレー等)、似た植物の名を書いたりしても良いでしょう。ともかく、後で見ればわかる方法をそれぞれ編み出して下さい。

最低一枚の絵に40枚から50枚の写真を

写真はあくまでも資料用の写真であることをふまえて撮ります。よく授業で「写真を撮ってあるから大丈夫」と言って、構図と同じ位置で撮った一枚のきりの写真で描こうとする無謀な方がいらっしゃいます。これは天才でなければ無理な話です。まずは構図と同じ位置で手前、中間、奥等、数か所ピントを合わせて数枚撮ります。そしてそれぞれの部分(花の前向き。後ろ向き、つき方、おしべ、めしべ、葉の鋸歯、葉脈、葉腋、茎など....)毎にパチリ。そして忘れずに植物の周辺や下草、土壌等も撮っておきます。つまり一枚の絵の為に40枚から50枚は撮るつもりで細かく観察しましょう。現在はデジタルカメラが主流で、フィルムを必要としないので、フィルムの本数にとらわれず撮影することができますが、メモリーやバッテリーに関しては、出かける前に調べ、必要であれば充電器や予備のメモリーも持って行くことになります。

作例に学ぶ1ー礼文林道への道

冒頭でご紹介した、作品は作品紹介ページでも紹介したものですが、作品の制作手順はこうです。前年の同じ時期にこのルート(片道1時間半ぐらい)の植生を調べ、このルートの植生を凝縮した作品作りを決定し、いざ現地へ向かいます。主な植物は現地でデッサンし、下草や土壌の資料写真をたくさん撮り、アトリエで彩色します。

資料写真 ハマハタザオ
画像の説明
左から:全体写真、上部(種にピント)、下部、周囲で見かけるオオセンチコガネ

資料写真 レブンコザクラ
画像の説明
左から:全体、花、周辺の植物

画像の説明
左から:葉の写真、周辺の植物と下草

作例に学ぶ2ーエゾエンゴザク

エゾエンゴサク

左のエゾエンゴサクは礼文島のいたるところに咲いています。しかし、よく観察をしていると育成環境で花の大きさ、色、葉の形に変化があることを発見しました。最初は左はじに描いてある大きな花穂のある個体(日当たりの良いところに生えていた)だけ描くつもりでしたが、ササや下草の中に咲く違う個体も描き加える事にしました。友人に話によると、赤いDNAは優性因子らしい...なのでササの中にあるコバルトグリーンのエゾエンゴサクは貴重かも...礼文島内でもこの色のエゾエンゴサクは花も少なく、個体数も少なかった....
画像をクリックして大きな画像をご覧いただけます。

powered by HAIK 7.3.7
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. HAIK

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional