第41回ーブドウを描く
第41回ーブドウを描く
秋になると描きたくなるブドウ。
皮のグリーンの品種は種子が透けて見え、その美しさは筆舌に尽くし難いです。今回は岩手のワイナリーで描いた「リースリング・リオン」を例に、実の大きさと質感の表現を学びます。
岩手のワイナリーでの出会い
今から4年前の2013年の10月、宮澤賢治の足跡を訪ねて岩手の旅に出掛けました。その折に、以前から行ってみたかったワイナリー、エーデルワインにも行ってきました。私のフィールド・礼文島の常宿でいつも出されるのがここのワインです。岩手の早池峰山にはエーデルワイス(セイヨウウスユキソウの仲間、ハヤチネウスユキソウ)が咲く事からこの名前がつきました。
伺った時はブドウの収穫期でしたが、快く畑にご案内頂き、「リースリング」と「甲州三尺」との交配種である「リースリング・リオン」をスケッチさせて頂きました。今回は光の方向を変えて、ブドウの大きさと質感を表現します。
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細かすぎるぐらいにデッサンを
まずは細かすぎるくらいデッサンをします(手順1)。
ブドウの中心の方に見える果柄(果実の柄の部分)や小さな実などもしっかりデッサンします。実の表面にあるツブツブは絵の具で描きますが、雌しべがあった跡ははっきりしているので、エンピツで描いておきます。
手順1
逆光で彩色する
今回は、光の方向を少し逆光気味にすることにしました。
なぜなら、少し透けて見える種子や、大きな実の存在感を表現したいと思ったからです。通常の作画の際は、左斜め45°の光で描きますが、今回のように品種の特徴を出す上で重要な場合は、光の方向や表現方法を変更する必要があります。まずは、光の方向をつかむつもりで全体を淡く彩色します(手順2)。
手順2
その際、光っている所や、透けて見える所は、後で慎重に彩色しますので塗らないでおきましょう。そしてこの品種は小さな房が集まって大きな房になっているような形をしていますので、それぞれの小さな房も意識して、さらに影をつけます(手順3)。
手順3
次は、奥の実から早めに仕上げるつもりで、さらに一粒ひとつぶの影を強調します(手順4)。このあたりで少し絵全体のバランスを考えて葉を彩色していきます(手順5)。
手順4
手順5
葉は独特の青緑色をしていますので、プルシャンブルーとミネラルバイオレットをサップグリーンにいつもより多めに配合してみましょう。葉の表情が出てきたら実の彩色に戻ります。
光が透過して透けた質感に見える部分を彩色していきます。
色を濃くしてしまうと質感が出なくなってしまうので、なるべく少ない重ね塗り回数で仕上げます(手順6)。最後に実の表面のツブツブを入れ、枝や奥の葉など全体のバランスを見て完成です。
手順6