第4回ーチューリップを描く
第4回ーチューリップを描く
「♪咲いたー咲いたー」小さい頃必ず覚える歌。そして
まるで記号のように描いた丸に3つのギザギザがある花
ーチューリップー
ほとんどの人が、この花の名前を一番最初に覚えたのではないでしょうか。今回は、具体的な質感表現の方法を学びます。
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描く前に必ずすること
チューリップはユリ科の植物です。ユリ科の特徴は、もう皆さんの頭の中に入っているでしょうか?まだの方は、必ず図鑑を確認してください。図鑑は見るものではなく読むものとしてお使い下さい。今回は植物の観察方法ではなく、デッサン、彩色技術の具体的な表現方法のお話をしたいと思います。
線で立体を描く
デッサンは、輪郭と面の変わり目の両方の線を描くのが重要です。特に、立方体のような立体は、面の変わり目の線を簡単に見つけられますが(図1参照)、葉のように曲面でできた立体の時は、注意深く見ましょう。特に、葉のねじれの表現では陥り易い間違いが二通りあります。
まず一つ目は「八の字のねじれに要注意」と覚えて下さい。図2のように、折れ山の線を加えないと葉の幅が表現できません。どうしても分かりにくい時は、リボンや葉の型に切った画用紙をねじってみましょう。
二つ目は「折れ返りの型」です。図3-1のように描いてしまうと、2か3のどちらの折れ返りを描いたのか分かりません。必ずはっきり分かるように描きます。
厚さはねじれを利用して
厚さの表現は、デッサンの下ごしらえと、彩色の的確さが合わさって初めて表現できます。チューリップの葉は斑入りでない限り、平坦で描きこみが出来ないので、葉先やねじれた所での厚さの表現が重要になってきます。図4-1のように、点丸の部分をつけて描かず、2のように厚さの分だけ離して描いておきます。彩色は、葉の線描の内側に、厚さの幅だけ明るい色の部分を残して彩色します。(図4-2)
白い緑色は紙の白を活かして
粉が吹いたような質感を出すには、絵の具をたっぷりの水で溶きます。白い絵の具を入れる代わりに水を入れることで、紙の白を利用して描くことが出来ます。蔭は通常つける陰影の半分以下の面積にするつもりで彩色します。
そして、陰影をつけたいところにそっと水を塗り、紙が生乾きのうちに絵の具を置くようにして塗ります。これを「たらし込み」と言います。たらし込みが出来るようになると、いろいろな作品に応用が可能になりますので、紙がどのぐらい湿っている時に、絵の具を置くと良いのか?その時の絵の具の濃度はどれくらいが良いのか?等々いろいろ練習してみて下さい。
ユリ科の定番、線描は花のつや表現に
線描の技術をチューリップの花被片の光沢表現に使います。まずは、大まかな影をつけて、卵型の立体感を表現します。この時に、少し広めに光の部分を空けておきます。そのあと、光の方から影の方に向かって線描を増やしていきます。影の強いところは何度も線描を重ね、陰影をより強調します。
(図5参照)
印象の違いは構図で補う
チューリップの花は、横から見た形と上から見た形がだいぶ違って見えます。
パーロット咲きやユリ咲きのように、花被片が開く品種は中が簡単に描けますが、そうでない種類の場合は、画面の余白に雄蕊や柱頭の表現、花の断面など、科学的な要素を少し加えると構図がしまります。当然ですが、根つきを描く場合は、球根や大きくなった子房なども入れましょう。
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