第35回ーアイスランドポピーを描く
第35回ーアイスランドポピーを描く
春先になると花屋の店頭にポピーの花が並び始めます。
正確にはアイスランドポピー、和名ではシベリアヒナゲシというそうで
露地ものは3月から初夏まで花が見られます。描くのに時間のかかる
ボタニカルアートで、枯れやすい切り花を描くのは難しい事ですが
ポピーの切り花は水揚げが良く、つぼみの花を購入しても確実に花が
咲きます。アイスランドポピーを使って、切り花にチャンレンジしてみましょう。
モデルをつなぎながら描く
まず、自分のスピードに合わせて花の本数を決めましょう。
たくさん描けばモデルもたくさん必要になり、ときにはデッサンの段階でモデルを変える必要も出てきます。なお、ポピーの鉢植えを花屋で購入した場合も、はじめて描く場合は花だけに注目して描いてみましょう。
「花の中心を描いていたら、花弁が落ちてしまった...」こんな時は、違う花を用意して続けて描きます。この「モデルをつなぎながら描く」技術を身に付けると、落ち着いて丁寧にデッサンすることが出来るようになります。
変化の速い場所から描く
デッサンで重要なのはアタリ線です。
これはだいたいの大まかな線ではありません。構図や植物の大きさ、位置、角度などを正確にとった大きな線のことです。これがキチンと描けたら、あとは変化の速い場所から描き込んでかまいません。なお、今回のモデルの場合は「つぼみ」が一番急ぐ場所です。デッサン、彩色ともに速めに進める事になります。
デッサンー線描の役割
私が完全着彩で描くとき、立体感は線で、陰影は面で表現するように注意しています。ですから物理的な形の変化は、すべてデッサンの段階で表現します。ポピーの場合、うぶ毛と花弁のしわに注意して描きました(図1)。
ポピーの毛はエンピツで丁寧に描いておきます。こうすれば万が一、花が入手できなくなっても、線の上を絵の具でなぞれば毛が描けてしまうからです。デッサンの段階でアクシデントに備えておくことも、ボタニカルアートにおいては大切です。
花弁のしわに関しては毛の話とは逆で、描き込み過ぎないように注意しましょう。フリルのように波打っているところは陰影として彩色のみで表現しますので、折り紙のようにはっきりと見える線だけを描くようにします。そうすると、薄い花紙のようなポピーの花弁の質感につながるデッサンになるでしょう。
彩色ー変わりやすい部分から
彩色は、茎やつぼみなど、モデルが変わると描きにくくなる部分を先に描きます。落ち着いて丁寧に描いていきましょう(彩色の手順を参照)
彩色の手順
図ー1
茎やつぼみなど、画面に影響がなく急ぐ部分を先に彩色する。
図ー2
基本通りに遠景から彩色を進める。
図ー3
花弁の下地を彩色。作業前に「下地→本塗り→影の彩色」と、何色に何色を重ねて彩色すれば花の色になるか、試し塗りをしておく。
図ー4
この段階になったら、一つづつ仕上げてかまわない。必ず本物のポピーを目の前において彩色作業を進める。
図ー5
花の彩色が済んだ状態。この後、毛の色を塗る。丁寧に心を込めて一本一本の毛を描き込めば完成です。