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第32回ープリムラを描く

第32回ープリムラを描く

昔、会社員をしていた頃スイスとの国境近くの街に仕事で出かけました。
日本で言えばフキのトウが出る季節、落葉広葉樹の林縁にチラホラ黄緑色が見えました。地面に張り付くように生えている植物に近づいてみると、それは原種のプリムラでした。今は何の種類だったか思い出せません。でもあの植物を見つけた時の気持ちは今でも忘れられません。

プリムラ

参考作品ー1

大ざっぱと大きくの違い

今月はちょっと早めですが初春の気配がすると店先に並び始めるプリムラを描きたいと思います。まずはデッサンのポイントですが、プリムラの全体像を大きく捉えて下さい。よく鉛筆デッサンでアタリ線をとる時にこの線を「大ざっぱにとる」と勘違いしている方が多くいます。あくまでもこれは「形を大きくとらえる」と言う事で「大ざっぱに描く」とは異なります。では具体的にはどう違うのでしょうか?ご説明しましょう。

プリムラ・オブコニカ

参考作品ー2 プリムラ・オブコニカ

まずはアタリ線を描く時には大きさ、位置などは正確でなくてはいけません。ですからまず植物を大きな塊に表現します。まるで針金で立体を作っていく様なやわらかく形をつかまえます(図-1)。そして花がレブンコザクラ(図-4レブンコザクラの制作過程)やプリムラ・オブコニカ(参考作品ー2)の様に塊でつく植物は、この後ひとつひとつの花の位置を描き入れます。その時大切なのは全体の大きな形を見失わない事です。

形の捉え方

よく見かけるのは図2-aのような作品です。全ての花が正面から見た正円に描けてしまい、まるで紙芝居を並べた様な平らな絵になってしまっています。図2-bの様に、全体の大きな形に張り付くように横向きの花は少し歪めて描いていきます。この考え方、形の捉え方はアジザイのような花の時も同じです。

陰影においても大きくから

ここに掲載したレブンコザクラは葉があまり特徴的ではありませんが、花屋などで売られているプリムラ類の葉は、表面に凹凸があり、葉脈もかなりはっきり見えます。しかし彩色の際にあわてて、すべての葉脈を表現しようと思ってはいけません。早い段階から葉脈を白く(もしくは淡い色で)残して表現しようとすると、魚の骨のように骨張った表現になってしまいます。
ですから、まずは葉どうしの重なりや花の曲がり具合などを大きく彩色し、その後主脈、一次側脈、二次...、三次...、そして細脈の表現に移行していきます(図-3)

葉の制作過程

図-3

色の濃淡と陰影の濃淡

花の彩色の際、たいてい裏向きの花が奥にあり、表側が見える花よりも淡い色をしています。この時、たいていの方はどちらを先に彩色するのか悩み、色の濃い表向きの花を先に彩色してしまいます。こうしてしまうと空間表現が大変しにくくなります。まずは奥にある裏向きの花、右側の方にある表向きの花、左側の方にある光があたって明るく見える花の順に仕上げていきます。「デッサンは手前から」「彩色は奥から」の基本をはずさない様にしましょう。「裏向きの淡い色の花の影は何色?」と考えてしまう方は多いでしょう。ここで白い花の影はどうつけていたかを考えてみて下さい。そうです、黒を使っていたのではないでしょうか。つまり黒に花の色を少し加えて淡く彩色すれば裏向きの花の色になるのです。(図-4レブンコザクラの制作過程を参考にして下さい)

レブンコザクラの制作過程

図-4レブンコザクラの制作過程

誰でも初めは初心者

参考作品-1と2は私が植物画を故佐藤廣喜氏に習い始めた頃に描いたものです。今から見ると描いた個体、構図、彩色技術等々...問題だらけですが、一生懸命植物と向かい合っていた頃を思い出します。皆さんも初めて描いた絵はお持ちでしょうか?いつか制作活動で行き詰った時に引っ張り出してみると、絵や植物に対するシンプルな情熱を思い出すことができるでしょう。
きっとそれが新しい制作への道しるべとなるに違いありません。

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