第23回ーデンマークカクタスを描く
第23回ーデンマークカクタスを描く
完成画 デンマークカクタス「トーア・ニレ」
Schlumbergera ×buckleyi
昔は「シャコバサボテン」や「クリスマスカクタス」などと呼ばれていましたが、最近はその一系統が「デンマークカクタス」という名で出回っていることを知りました。平たく見えて厚みがある葉と繊細そうで意外とがっちりした形の花のデッサンと彩色方法を学びます。
意外と難しい構図選び
デンマークカクタスは、中心から外側に向かって放射状に広がった姿をしていています。ですから、紙の中心に株全体を入れてしまうと、両側に空間のある間の抜けた構図になりがちです。そんな時は、思い切って片側を画面から切ってしまいましょう。そうすれば、しだれた花の姿も強調され、まとまりのよい構図になるでしょう(図1)。
この構図の考え方は、ラン科やユリ科の植物を描く時にも応用が可能です。ただし、必ず片側には、その植物の平均的な大きさや特徴を持つ、葉や花の姿が入っていることが条件となります。
奥行きのあるデッサン
私はいつも、絵の良し悪しはデッサンで決まると思っています。遠近や立体感は、彩色のみで強引に表現することはできません。ですからデッサンにも線の強弱をつけ、時には陰影も鉛筆でつけてしまってから描きます。(図2-①)。ただ、初心者の方が線に強弱をつけると、線が太くなり過ぎてしまいます。細く均一な線が描けるようになったら、細い線の中で、濃い色と薄い色の線を描き分けてみて下さい。
図2-①:デッサン。鉛筆で陰影もつけていく。
大きく形をつかまえて彩色
まず、左斜め45°光で考えた場合、株全体として考えると、右側が暗く見えます。ですから、右側の方にある葉から彩色を開始しますが、葉は長い一本のテープ状の物体を考えて彩色します。
この時、最初の彩色は平塗からでも、平塗せずにいきなり陰影をつけても構いません。大抵の方は、植物画を習い始めた頃にまず、平塗を彩色の一番初めの作業として習っていると思います。しかし、、ある程度描けるようになった方は、必ずしも平塗はしなくても結構です。
まずは白い花と考える
デンマークカクタスの場合、花の色が白に色の縁取りの品種が多いと思います。以前申し上げたように、ますは白い花と考えて陰影のみを彩色します。(図2-②)。そして、雄しべと雌しべは彩色しないでおきます。
図2-②:彩色。まずは白い花と考えて、花に陰影をつける。
仕上げに向かって
その後は、全体的に作画作業を進めます。葉は一節ごとに彩色します。葉の断面形状を考えながら、光と影の方向をよく考えて彩色して下さい。光が垂直に当たる場所が明るくなります(図3)。
光が垂直に当たる部分が明るくなる。
特に葉の尖った部分は丁寧に彩色しないと、込み入った株の立体感が出なくなりますから、注意してください。花は縁の模様を入れると同時に、雄しべ(葯を除く)と雌しべを彩色してください(図2-③)
図2-③:その後、縁の模様と雄しべ、雌しべを彩色する。
最後のひと手間
最後に葯を彩色します。葯の色に混色には、白も使用してください。そして何回も絵の具を高く盛り上げるように彩色します。なお、ここまでの作業で終了するのは初級編です。さらに上のレベルを目指したい方は、デンマークカクタスの葉の連結部分や花茎のわきにあるうぶ毛と、木質化した茎の表現しましょう。その場合はデッサンの段階ですべて描いておき、白く塗り残しておきましょう。そして前述のように、葯を彩色した後に、うぶ毛と木質化した茎を描き加えて仕上がります(完成画参照)