第16回ーセントポーリアを描く
第16回ーセントポーリアを描く
開花期が長く描きやすいセントポーリア。
植物画に必要な水彩の技法がぎっしりつまっています。
最近は花形も豊富で珍しい品種もたくさんあるようです。
今回は彩色の技法を中心にお話をします。
デッサンは見えるところすべて描く
植物をよく見て、葉や花のつき方までしっかり描きます。うぶ毛はすべてエンピツで描きます。葉の表面の毛は見えるところのみ描いておきます(図1)。
図1 鉛筆デッサン
葉や花のつき方に気をつけてデッサンしましょう。
彩色手順は初心者と上級者でふた通りある
まず初心者の方の場合、彩色は表葉を彩色したら、そのあとは茎、花、裏葉という様に、部分的に彩色をしていきます。これはまず技術の習得を優先に考えているからです。しかし本来、ボタニカルアートは絵画ですので、個々の部位を細密に描けるようになった上級者の方は全体的に描き進めることを覚えて下さい。全体的にといっても1本の筆で描くわけですから、いっぺんに全体を彩色することはできません。そんな時は彩色の基本、「彩色は奥から」です。水平、垂直方向で自分がいる位置から考えて、一番遠くにある場所から彩色します。奥からモチーフに向かって1回ずつ彩色をしたら、また一番奥に戻って2回目の重ね塗りをします。当然、葉や花などをすべて同時に、そして距離順で彩色しますから、パレットの上には花や葉などのすべての色が作られている状態です。
初めの一色の裏技
まず皆さんはきっと初めに平塗りをされると思います。葉脈や茎の一番明るいところの色で、緑の部分の地塗りをしているのではないでしょうか?
この作業をすると筆や絵の具のすべりが良くなり、その後の彩色の塗りむらも少なくてすみます。しかし、平塗のデメリットが1つだけあります。それは1回平らに塗る分、絵が1回分濃く仕上がるということです。ですから吉田流の場合は「平塗はしない」なのです。
最近、私の彩色のこだわりは、絵を明るく仕上げることと、美しい色に仕上げることなので、平塗を安易にすることはほとんどありません。その後の重ね塗りの際に彩度(発色)を上げたい(注1)など特別な理由がない限り、初めからぼかし塗りをしながら描きはじめます。
*注1...彩色は白が入っても黒が入っても下がり、また混色によっても下がります。透明水彩は下地の絵の具に影響をうけるので、下地に彩度の高い色を敷いておくと彩度が下がりにくくなります。
彩色
花と葉の彩色は図2と図3を参照して下さい。花柄、葉柄の彩色は葉の彩色と同様に行った上で、点描で赤い色(注2)を彩色します。
*注2...ローズマダー+ミネラルバイオレット+バントアンバー
図2
花の描き方
①花弁の重なり方を考えながら、ぼかし塗りをします。
②少し鮮やかな色に変えて、さらに細かい陰影をぼかし塗りで彩色します。
③光の加減で見える鮮やかなブルーやさまざまな色を、見えるがままに彩色し、おしべとめしべも彩色します。
図3
葉の描き方
①葉脈の色で平塗します。光沢がある場合は光の部分を白く抜きます。
②葉脈を残しながら、葉の陰影をつけます。
③葉の陰影を強調しながら、葉の表面のうぶ毛を表現します。