第1回ーバラを描く デッサン編
第1回ーバラを描く デッサン編
ルドゥーテのようにバラが描けたら....
ボタニカルアートを学ぶ者なら、誰でも一度は思うもの。
しかし、すべての技術を駆使してもなかなか描ききれないのが
バラの手強いところです。今回は普段はお見せしない私の失敗作品や
下絵を紹介しながら、バラの描き方を学びます。
やはり見るだけではつまらない
「バラを描きたくてボタニカルアートを習い始めました」と言うお話をよく耳にします。その度に「バラは見るもので、描くものではないよ」と言っていらした恩師、故佐藤廣喜氏のことを思い出します。
しかし、ボタニカルアートを始めたからには、一度は描いてみたい題材です。バラは観察ポイントの多い植物です。形態分類のポイントは描き始める前に確認して、構図も決めてから描き始めましょう。
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一瞬の描き時を逃さずに描く
ここでは普段お見せすることのない、私の失敗作品を紹介します。
図1は「天の川」という品種です。いただいてすぐに咲き始め「ナニワイバラ」と同じようなカップ状になったところで急いで描きました。花の彩色をしたあとじっと見ていると、花弁が枯れる寸前のように反り返ってきました。枯れてしまうのかと思うと、その状態のまましばらく咲いていました。つまり、この絵のバラはまだ咲ききっていない状態のもので、説明が不十分な絵なのです。
では、その時期を描くのが適切なのでしょうか?バラは特に描く状態の見極めが難しい植物です。花糸が見える品種であれば、花粉がはじけ始める前後ぐらい。剣弁高芯(*)の品種であれば、中心の花弁の巻き穴が縫い針1本分ぐらいになった時(なんて微妙な!!)というのが一般的なようです。しかし、これはあくまでも目安ですから、やはり栽培家や専門家に聞くのが一番良いようです。
*剣弁高芯~花びらが反り返って先端がとがり、花の中心部が盛り上がった咲き方。
間引かず、はしょらず的確な作業を
「彩色でなんとかしようとしても、デッサンがいい加減だったら何ともなりません」これは私の口癖です。バラの場合は特に、葉脈や鋸歯、花弁の重なりや折れ返りなどを、絵の具で強引に描こうとする方がいらっしゃいますが、それぞれの部分を鉛筆できちんと描いておかないと、彩色の時に余計に悩んでしまいます。
葉脈は主脈から数えて3番目に太い脈(二次側脈)までは描きます。(図2)。
鋸歯はあたり線から出ているように描くと、三角形になってしまいがちなので、凹んでいるように描くと、葉先に向かって倒れている感じの形に描けます(図3)。
バラの場合は重鋸歯の葉の品種もあるので、その場合はまず、大きい方の鋸歯(単鋸歯に見えるような感じ)を描いて、その後小さい鋸歯を上に描き加えます(図4)。
花弁の枚数は品種によって何枚から何枚ぐらいと決まっている種もあります。間引かずに、手前中心の花弁から上下方向、その後左右奥へと、一枚づつ根気強く描いてゆきます。
鑑賞に堪えるデッサンを
冒頭で述べたとおり、バラはデッサンだけでも大変なモチーフです。無理に彩色作業に進まずに、描線のみの作品でもよしとするぐらいのつもりで臨みましょう。デッサンが丁寧に描けていれば、翌年咲いた花で彩色することも可能だからです。