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ボタニカル・アーティストのための色彩学

ボタニカル・アーティストのための色彩学

言葉の表現力の大切さ

ボタニカルアートの指導の仕事をするようになって気づいたことがあります。
それは、緑の表現力の弱さです。昔からよく日本人は「緑」の事を「青」と表現することが多く、「青信号は緑信号だ」などと言われた時代もありました(最近はホントに青信号になってきましたが)。「青によし」を言葉通りに思っている方は緑の混色が苦手な方が多く、「ツバキの葉は濃い緑で、菜の花は薄い緑」と言う言い方をよくされます。そうすると、たいていの場合、菜の花の緑の影が付けられずに途中で止めてしまった様な絵になってしまったり、どんどん影をつけていったら菜の花らしくない緑になってしまったりします。これはズバリ言葉の表現力不足のために混色が出来なくなっているのです。言葉で色を作るわけではありませんが、「緑」を的確に言葉で表現出来ない人は色彩学を学び、「緑」の言葉の表現力を広げる事で、正確な色作りが可能になります。ここではボタニカル・アートに応用の効く簡単な色彩学をご紹介いたします。

塗り重ねの基本三原則

通常のボタニカル・アートを描く際、鉛筆で線画を描いたあと、水彩絵の具で着彩を行います。特に透明水彩絵の具を使用しての着彩は、重ねる順番が大切です。作業手順を3段階に分け、色彩学と照らし合わせながら葉の緑色を例にして、ご説明しましょう。

手順1 下地の色ー彩度と明度の違いを理解する

まず初めに下地の色を彩色します。初めは「葉や葉脈の色で平塗をする」と学んだ方が多いのではないかと思います。これはあくまでも初心者向けの具体的な説明で、水彩画としての説明ではありません。水彩画の一般的な手順として、まず初めに塗る色は「彩度と明度の高い色」です。鮮やかな(彩度の高い)色と明るい(明度が高い)色の区別がつかない方が多いので以下のカラーチャートをご覧下さい。

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つまり鮮やかな色を水で薄めて塗ることが下地作りでは重要なので、塗り方は平塗でもぼかし塗りでも構わないことになります。吉田流の彩色法では、奥から必ず彩色しますので、奥の方は平塗で、手前の方はぼかし塗りをして紙の色を少し残します。

手順2 対象物の色ー三原色から色相を分析する

1の手順を何度か繰り返した後、次は対象物そのものの色を彩色します。この時に重要なのは「色相を分析する」事です。序文でも述べたように、緑を「薄い」とか「濃い」と表現してしまう方はこの部分が不明瞭な方が多いようです。そんな方はまず、子供の頃に習った三原色を思い出して下さい。「赤・青・黄」の三色しか絵の具を持っていなかった頃、緑はどうやって作ったのか.....そうです、青と黄を混ぜることで緑を作りましたね。つまり、様々な緑は「青と黄の配合率で出来ている」と考えれば良いのです。

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そして、吉田流ボタニカル・アートで多く使用する色で円を作ってみました。先ほど説明した三原色の三角から、色数が増えた事で虹色の円が出来上がっています。この円の事を一般的に「色相環」と呼びます。そして葉の色を作り時、サップグリーンやビリジャングリーンを中心に使用する方が多いと思います。そんな時....そうです、「緑は青と黄の配合で出来ている」という事を思い出して下さい。ご自分が描こうとしている葉の緑色がサップグリーンより黄色いか青いか考えてみて下さい。サップグリーンより黄色い対象物の場合は黄色寄りの色を、青い場合は青側の色を混ぜる事で正確な緑を表現することが出来るのです。

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手順3 影の色ー無彩色と捕色を使い分ける

手順2を数回行い、全体的に絵がしっかりしてきたら、次に影の色を彩度を少し下げて彩色していきます。この際なるべくアイボリーブラックのような「無彩色」は安易に使用しないことがやさしく美しいボタニカル・アートを描くためのポイントです。「パレットに白と黒は出さない」と習ったことのある方も多いはずです。何故なら手順1で説明した通り、白は水を代用する事で彩度を下げずに明るく透明感のある色を表現出来ますし、黒は「捕色」を代用することで効果的な表現が可能になるのです。補色とは色相環で180度反対側に位置する色の事を指します。緑で考えると赤や紫がちょうど反対側の色になりますので、パレットにある「花の色を葉の色に混ぜる」と考えても良いかもしれません。

その植物が持つ色素は限られた色です。ですから、その植物になった気持ちで色を考えます。「上手に描くよりもいい絵を描く」そんな気持ちを持って植物に寄り添って下さい。そうすれば必ずステキな作品が完成するはずです。

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