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カカリヤの花

カカリヤの花

カカリア

朝日が青く
ひかりはひどい銅なので
この尾根みちの樹の影は
みんな右手の谷の霧
寒天質(アガーチナス)なよどみのなかに
おぼろに黒く射込まれる
……その灰いろの霧の底で
鳥がたくさんないてゐる……
まっ赤なあざみの花がある
樹をもるわづかなひかりに咲いて
巨きなカカリヤの花とも見える
そんなに赤いあざみの花

……この尾根みちにのぼってから
まだ十分にもならないのに
靴もづぼんも露でいっぱい
流れを渉ったやうになった……

賢治がこよなく愛した高原、種山が原詩群のひとつ「朝日が青く」の出だしの部分です。朝霧立ち込める尾根路に「巨きなカカリヤ」のように真赤なアザミが咲いているとしています。通常、アザミは紫系の花を付けますが、それがカカリアと見まがうほどに赤かったのでしょうか。アザミもカカリアも同じキク科ですが、カカリアは熱帯アジア原産の一年草です。賢治が言うように真っ赤な色が印象的な花です。灰色の霧の底に咲く真赤なアザミのコントラストが幻想的な心象風景です。

宮澤賢治 詩・朝日が青く写真:fine Gardening カカリア

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