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霧の海の中で

霧の海の中で

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宮澤賢治は1921年12月から1926年3月までの4年と4ヶ月にわたって花巻農学校の教師をしていました。農学校教師の時代は、詩作の最も華々しい時期でもありましたが、農学校を題材にした作品はけっして多くはありません。その中でもこの詩は濃霧に包まれた下校風景を描写しつつ賢治の心象が交錯した作品です。

今日もまたしやうがないな
青ぞらばかりうるうるで
窓から下はたゞいちめんのひかって白いのっぺらぼう
砂漠みたいな氷原みたいな低い霧だ
雪にかんかん日が照って
あとで気温がさがってくると
かういふことになるんだな
泉沢だの藤原だの
太田へ帰る生徒らが
声だけがやがやすぐ窓下を通ってゐて
帽子も顔もなんにも見えず
たゞまっ白に光る霧が
ぎらぎら澱んでゐるばかり
もっとも向ふのはたけには
つるうめもどきの石藪が
小さな島にうかんでゐるし
正門ぎはのアカシヤ列は
茶いろな莢をたくさんつけて
蜃気楼そっくり
脚をぼんやり生えてゐる
(後略)

ツルウメモドキ(蔓梅擬、学名:Celastrus orbiculatus)は、ニシキギ科ツルウメモドキ属の落葉つる性木本です。花は5月頃開花し、果実は秋に淡黄色に熟し、3裂して中から赤い仮種皮に被われた種子が現れるます。これが美しいので生け花や装飾用に使われます。

宮澤賢治 詩・今日もまたしやうがないな
写真:wikipedia~ツルウメモドキ

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