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賢治の東京

賢治の東京

スズカケノキ

宮澤賢治は生涯に10回、東京を訪れています。片道10時間以上かかった当時、15年の間に10回の上京は少なくないと思います。
中でも、1928年の6月に大島在住の友人、伊藤七雄、チヱ兄妹を訪ねる前後2週刊の滞在中に詠われた「高架線」は当時の大都市東京の心象風景として描かれています。

未知の青ぞらにアンテナの櫓もたち
……きらめくきらめく よろひ窓
行きかひきらめく よろひ窓
ひらめくポプラと 網の窓……
羊のごとくいと臆病な眼をして
タキスのそらにひとり立つひと
……車体の軋みは六〇〇〇を超え
方尖赤き屋根をも過ぎる……
タキスのそらに
タキスのそらに
タキスのそらに
酸化礬土と酸水素焔にてつくりたる
紅きルビーのひとかけを
く大切に手にはめて
タキスのそらのそのしたを
羊のごときやさしき眼してひとり立つひと
(中略)
この大都市のあらゆるものは
炭素の微粒こまかき木綿と毛の繊維
ロームの破片
熱く苦しき炭酸ガスや
ひるのいきれの層をば超えて
かのきららけき氷窒素のあたりヘ向けて
その手をのばし
その手をのばし
その手をのばし
まさしく風にひるがへる
プラタヌス グリーン ランターン
プラタヌス グリーン ランターン
幾層ひかる意慾の波に
幾層ひかる意慾の波に
ぱっとのぼるはしろけむり
銀のモナドのけむりなり
(後略)

「タキスの空」はターコイズ色の空、そして方尖赤き屋根に紅きルビーの描写、そして、プラタヌス グリーン ランターンは垂れる緑色の果実でしょうか、煌めくような描写が美しいです。

スズカケノキ(鈴掛の木、篠懸の木、学名: Platanus orientalis)は、スズカケノキ科スズカケノキ属の落葉広葉樹で、花は春、晩秋に果実を成します。
6月のスズカケノキに吊り下がるグリーンランタンは果実ではなく、瑞々しい青葉のゆらめきでしょうか...

宮澤賢治 詩・高架線
写真:wikipedia~スズカケノキ

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