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秋の音色

秋の音色

コナラ

北いっぱいの星ぞらに
ぎざぎざ黒い嶺線が
手にとるやうに浮いてゐて
幾すぢ白いパラフヰンを
つぎからつぎと噴いてゐる
そこにもくもく月光を吸ふ
蒼くくすんだ海綿体カステーラ
萱野十里もをはりになって
月はあかるく右手の谷に南中し
みちは一すぢしらしらとして
椈の林にはひらうとする
……あちこち白い楢の木立と
降るやうな虫のジロフォン……
橙いろと緑との
花粉ぐらゐの小さな星が
互にさゝやきかはすがやうに
黒い露岩の向ふに沈み
山はつぎつぎそのでこぼこの嶺線から
パラフヰンの紐をとばしたり(後略)

満天の星空の下、月明かりを受け
闇の中に楢の木立ちが白く浮き立ち、
足元では木琴の一種、ジロフォンのような響きを
虫たちが奏でます。

宮澤賢治 春と修羅第二集 北いっぱいの星ぞらに
写真:wikipedia~コナラ

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