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海鳴り遠く

海鳴り遠く

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宮澤賢治は1924年5月21日、花巻農学校の教師時代に修学旅行の生徒を引率して、北海道は苫小牧を訪れました。賢治が書いた「修学旅行復命書」にはこの夜のことを「八時苫小牧に着、駅前富士館に投ず。パルプ工場の煙赤く空を焦し、遠く濤声あり。」と記しています。この遠い「濤声」に誘われるようにして、夜遅く一人旅館を出て海岸に出て、太平洋の黒々とした海を眺めた賢治は次のような詩を残しました。

あんなに強くすさまじく
この月の夜を鳴ってゐるのは
たしかに黒い巨きな水が
ぢきそこらまで来てゐるのだ
……うしろではパルプ工場の火照りが
けむりや雲を焦がしてゐる……
(中略)
はるかなはるかな汀線のはてに
二点のたうごまの花のやうな赤い灯もともり
二きれひかる介のかけら
雲はみだれ
月は黄金の虹彩をはなつ

トウゴマ(唐胡麻、学名:Ricinus communis)は、トウダイグサ科トウゴマ属の多年草。別名、ヒマ(蓖麻)と呼ばれます。種子から得られる油はひまし油(蓖麻子油)は良く知られています。このトウゴマの花に例えた汀線の灯りは漁船のものでしょうか。この時の体験をもとに、「牛」(『春と修羅 第二集』)という作品が生まれました。

宮澤賢治 詩・海鳴り
写真:wikipedia~トウゴマ

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