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2022年タイトル花

2022年タイトル花

12月のタイトル花

リカステ

リカステ カプリコーン・クレナ・ヒトミ

我が家の階段ホールにはこの作品が飾られています。
私にとっては記念碑的な作品と言っても良いでしょう。私がまだ故佐藤廣喜氏の元でボタニカルアートを学んでいた頃の作品です。この頃......漠然とですがボタニカルアート作家を目指しはじめていました。この作品は先生の勧めで静岡国際蘭展に出品、美術工芸部門で最優秀賞を頂いた作品です。

リカステはペルー等の中米高地に生息するランです。私がこの作品を描いた頃はまだまだ日本でリカステが普及しておらず開花株を入手してもほとんど葉は切られていました。そんな中、当時としては大きな葉を付けた開花株を運よく入手することができ、この大きな葉を生やしたおもしろい作品にすることが出来ました。東京から横浜に居を移して、蘭の栽培から足を洗いましたが、我が家の階段ホールには枯れる事のないリカステが咲き誇っています。

追記
このところ、タイトル花のUPが少し遅く、いつも楽しみにして下さっている読者の皆様にお詫び申し上げます。来年はもう少し頑張りたいと思います。
今年はありがとうございました。そして来年もボタニカルアートサロンをよろしくお願い致します。

11月のタイトル花

デンマークカクタス

デンマークカクタス

いつからだったか我が家でシャコバサボテンとかカニサボテンとか呼ばれているこの植物......本当はデンマークカクタスと言う名だと知りました。ボタニカルアートを描くと沢山の植物の名前を知ります。何よりも良く観察することで、その植物の形を深く知り近縁種や原生地を調べる事でさらに記憶が補強されます。

ボタニカルアートを描く事は自分の植物学の引き出しえを増し、まるで頭の中に地図が出来上がってゆくような気持にもしてくれます。

デジカメ主流、そしてケイタイのカメラの性能がすごく良くなった昨今ですが、私はやはりアナログ人間のようです。でもどんなにAIの技術が進もうと人間がこの地上にいる限り植物達がいる限り0ゼロ1イチ信号では不可能なことが残り続けるはずです......

なんか大仰な話になってしまいましたが、地面の上の小さな発見が愛おしいと思う今日この頃です。

画:「デンマーク・カクタス」吉田 桂子
文:吉田 桂子

10月のタイトル花

マルバシャリンバイ

マルバシャリンバイ

通常植物の名前は、カタカナ表記をします。
なぜなら、植物名の由来には諸説あるものが多く、文学の中で当て字で表現されていたりもするからです。しかし時にその植物の語源が気になってしまうことがあります。このマルバシャリンバイもそのひとつです。

おそらく「丸葉車輪梅」と書くのかな.......?と想像はつきます。
どうも形態からきている名前の様です。
「丸葉(丸い葉の)、車輪(枝が車輪の様に多く一か所から分岐している)、梅(梅の様な5弁の花を咲かせる)」という様に、時に語源を知ると植物画家の観察の手助けになることもあります。展覧会やコンクール等での表記は別として時に和名を探求する事で知らなかった文学に出合ったり、植物の雑学の引き出しが増え、新しい楽しみに発見につながります。

そうそう、わざわざ「丸葉」と言われている裏側には「丸葉ではない」ただのシャリンバイという植物があります。道路や店舗の植栽としてよく見かけます。「車輪」の様に沢山分岐して今までならツツジが植えられていた様な所に植えられており、花と実そして冬には葉が美しく色づいて一年中楽しませてくれる植物です。

画:「マルバシャリンバイ」吉田 桂子
文:吉田 桂子

9月のタイトル花

ナンバンキセル

ナンバンキセル

この植物を知ったのは我が恩師の佐藤廣喜先生の作品だったように思います。寄生植物という怪しげな言葉を知ったのもこの頃です。

ナンバンキセルはハマウツボ科の植物で、仲間には科の名前となったハマウツボやヤセウツボ等があります。どれも葉緑素を持たずナンバンキセルはススキやカヤツリクサに、ハマウツボはヨモギに、ヤセウツボはシロツメクサやアカツメクサ等に寄生する様です。

和名のナンバンキセルは漢字では南蛮煙管と書く様です。
外国製の煙管(キセル)という意味になります。私にはガラス製の美しいキセルが頭に浮かびました。

万葉集にも題材とされている様で、尾花(ススキ)と共に思い草と歌われて登場するようです。

思い草......なんてステキな表現なのでしょう。南蛮煙管と思草は秋の季語だそうですが、もう9月......まだ9月......秋が待ち遠しい今日この頃です。

画:「ナンバンキセル」吉田 桂子
文:吉田 桂子

8月のタイトル花

トルコギキョウ

トルコギキョウと言う名前からキキョウ科と思いきや実はリンドウ科です。
ではせめてトルコから来たのかしら?と思うと実はアメリカ大陸原産なのです。何故このような和名がついたのか......そのいきさつを私は知りません。
全然違う名前ならばいざ知らず、なんとなく似ている植物の和名がついていて非常に間違い易いですよね。

以前はほとんどが切り花でしたが最近は少し小型の品種の鉢植えが流通している様です。ガーベラもそうですが、切り花のみで流通していた花が鉢植えで出回るようになると切り花は色や形に、より価値観のあるゴージャスな品種が出回るような気がします。

最近の花屋で見かけるトルコギキョウはアンティーク調のくすみピンク、グリーンやベージュの花があったり、形もバラと見まがうほどの八重の花があったりします。ひょっとすると今度はキキョウではなくバラの名前を狙っているのかも知れません。

画:「トルコギキョウ」吉田 桂子
文:吉田 桂子

7月のタイトル花

ブルーベリーの花と実

ブルーベリーの花と実

連日の暑さ...もう気持ちの中はすっかり夏です。
庭の植物達全てが一ヶ月前倒しになっている気がします。
ブルーベリーもちょっと目を離したら完熟となり地面に落ちていました。
眼残しの無い様に収穫しないといけませんね。

この作品は花と実を描きましたが、実も早めの季節の枝で少し若い木を描いています。実を手前、花を奥にした構図で、花の白さを優先して表現せずに空気感を出すようにしました。サイン近くの葉の表現も線描きや淡い彩色のまま残すことで「ザ・桂子スタイル」にしてあります。

さあまた明日から庭の草むしりをしっかりとして、最後の一粒までブルーベリーを収穫したいと思います。
もちろん暑さ対策を万全にして......

画:「ブルーベリーの花と実」吉田 桂子
文:吉田 桂子

6月のタイトル花

スプレケリア・フォルモッシマ

スプレケリア・フォルモッシマ

子供の頃、お誕生日が近くなると庭にアマリリス、グラジオラス、カノコユリ、ヤマユリetc.......ゴージャスナ花々が咲き乱れていました。
そのすり込みのせいなのか、球根植物を見ると心がおどります。

この作品の植物はスプレケリア・フォルマッシモと言います。
和名では燕水仙(ツバメスイセン)と呼ばれています。
花の形を正面から見る大空にはばたき昇って行くツバメのようにも見えます。

このツバメスイセンを初めて知ったのはヨーロッパの古いボタニカルアート作品だったように思います。その作品のツバメスイセンは白と朱赤のバイカラーの花で、白い部分に少しグリン系の縞模様が入っていた様に記憶しています。どうしても描いてみたくてサカタのタネでやっと見つけた球根でした。

オーソドックスなボタニカルアートの構図で、私にしては正統派の作品になりました。この作品は現在ピッツバーグのハントボタニカル財団で保管されています。原画を見る事ができないので又庭に球根を植えてみたいと思っています。こんどこそバイカラーのものを探しあてて......

画:「スプレケリア・フォルモッシマ」吉田 桂子
文:吉田 桂子

5月のタイトル花

シラネアオイ

シラネアオイ

図鑑でしか見た事の無いその花を始めて本物を目にしたのは青山の花屋でした。昭和風の木造の一軒家を改造した花屋で、今ならカフェなどでも良く見かける造りですが、今から四半世紀昔の青山ではとても珍しい花屋でした。

色々な山野草にまぎれてピンクの大きな花を小さな草丈に咲かせていました。育てられるのか迷いながらもその花の魅力に打ち勝つことは出来ず、絵を描くために購入して帰りました。

それがこの作品に描かれているシラネアオイです。
図鑑には北海道、本州中部以北が原産の日本固有種とあります。
原産地の環境を考えながら頑張りましたが、やはり関東の夏を越えさせることができず枯らしてしまいました。今思っても本当に残念です。

あれから四半世紀近くの時が過ぎて私はボタニカルアートの上達と共に植物の栽培技術も上達しました。7年前には自宅の建て替えと共に古井戸を復活させてから心なしか我が家の夏は涼しくなった気がします。

ひょっとすると今なら上手にシラネアオイを育てられるかもしれません。

いいえ......やはり野の物は野に......ですね。

画:「シラネアオイ」吉田 桂子
文:吉田 桂子

4月のタイトル花

エンゴサク

エンゴサク

はるか昔のことですが、私は自宅の近くの幼稚園に行ってました。
通園路には里山の切通しの様な道があり、その脇の側溝には山からわずかな水が染み出ていました。晩春から初夏を迎えてもひんやりとした道端には紅紫色の美しい花が咲いていました。自宅に飾ろうと花を摘んで帰っても水上げが上手にできなくていつも萎れてしまいました。今から思えば、あの花はムラサキケマンであったと思います。

現在、我が家の庭にもムラサキケマンの花は春になると芽を出し、ゴールデンウイークの頃には満開になるのですが、小さい頃ひんやりとした薄暗がりで見たムラサキケマンより花が全体に白いように思います。

ケマンの仲間には色々な花があります。
黄色い花を咲かすキケマン、小型で淡い桃色のジロボウエンゴサク......
そうです、このグループの花はケマンと呼ばれる花とエンゴサクと呼ばれている花があります。ヤマエンゴサク、エゾエンゴサクetc......エンゴサクには青くて美しい花を咲かせる種も沢山あります。この作品のエンゴザクは青に少しだけ赤みを帯びた花を咲かせています。一説によると、青よりも赤い色素は遺伝的に強いそうで、一度赤系の色素が入ってしまうと代々に特徴として出てくるそうです。

そういえば私のフィールド礼文島で見られるエゾエンゴサクやヤマエンゴサクは白、ピンク、青があるのですが、この青の中に少し青紫系の青の個体とコバルトブルー系の青の個体が見られます。後者は比較的個体数も少なく、ひょろっとした小型の個体のように思います。
いつになったらあの美しい青い花を見られるのか......ただただ祈るのみです。

画:「エンゴサク」吉田 桂子
文:吉田 桂子

3月のタイトル花

チオノドクサ

チオノドクサ

「チオノドクサ」と聞くと一瞬ドキットします。
「チ」や「ドク」からくる音のせいかもしれません。和名の様に聞こえるこの名前も学名は「Chionodoxa」なので、きっとこの日本語読みなのでしょう。日本人の私にはかわいらしく美しいその姿にはあまりふさわしくない様に思ってしまいます。

さてもともと園芸店で購入したこのチオノドクサはしばしば庭の中で行方不明になります。私が庭をしょっちゅう掘り返すのでその都度掘り上げられてどこかに植え替えられてしまうからです。植えた当人も最近はリスのような記憶力となり、庭のあちらこちらから出てくる単子葉類を見つけては「これはスノードロップかな?」「これはヒヤシンス?」等と花が咲くまで同定できない始末......

チオノドクサは庭からほとんどいなくなってしまって昨年思いもよらない所から出ていたのですが、昨年末にそのあたりに盛土をした事を春になって思い出しました。今年は咲いてくれないかな、どこからか突然顔を出さないかな......とリスのように庭を見つめています。

画:「チオノドクサ」吉田 桂子
文:吉田 桂子

2月のタイトル花

リカステ

リカステ 種名不明

このリカステの作品は20年以上前に描いた作品です。
なぜなら、サインの下に完成年度が入っていないからです。
佐藤廣喜先生がお亡くなりになり、独り立ちした時のこのフルネームサインに変更しました。特に独立したばかりの頃は完成年度が入っていないので2000年より前のものだと思います。

現在はスケッチの日時や場所が明確な作品は画面余白に詳細な表記を入れ、作品の完成年度はサインの下に書き込むようにしています。
ボタニカルアートは作品の制作に年数がかかるので、この方が後に自分で分かり易い事に気が付きました。さてサインの話はこれくらいにしてこの植物の話をしたいと思います。

このリカステの種名は不明です。不覚にもタグを無くしてしまって品種名がわからなくなってしまいました。もし分かる方がいらしたら教えて下さい。

リカステとしては小型な品種で葉の大きさも通常のリカステの2/3程の大きさです。このくらいの大きさだと全草を描いても余白が出来にくく美しい構図がとりやすくなります。色も私好みの紫からあずき系の色に緑が入っていて、ついついこの組み合わせの蘭の花には属に関係なく描きたくなってしまいます。

短い人生の中で全ての植物を描き事は出来ません。以前はなるべく色々な植物を描きたいと強く思ったものですが、最近は好きな植物を好きなだけ描けたらいいと思うようになっています。

画:「リカステ」吉田 桂子
文:吉田 桂子

1月のタイトル花

クチナシ

クチナシ

新年明けましておめでとうございます。

1月3日...檀家となっているお寺さんにご挨拶に参りました。
その道すがらクチナシの実を見つけました。
葉はほとんどついておらず、オレンジ色の美しい実が沢山枝先についておりました。クチナシの葉はオオスカシバの幼虫の食草となっており、葉のないクチナシの木を良く見かけます。なのでこの作品を描く際、虫食いの跡を描くか描かないか...すごく迷いました。

私の恩師の佐藤廣喜先生は虫食いは大嫌いで、描かない様にと私も習いました。しかし、私自身のこだわりは「普通に目にする植物の印象を大切にする」です。そして迷ったあげくなんとなく虫に食われたクチナシの絵になってしまいました。師匠に対するせめてもの私の抵抗です。

先ほど、オオスカシバの話をしましたが、私の2年ほど前に成虫を1度だけ見たことがあります。庭のウグイスカグラの葉の上でじ~っとしていました。
あまりの美しさにうっとり見とれてしまい「そうだカメラ!!」と携帯を取に走った時は既に時遅しでした。我が家にはクチナシの木はないので、ひょっとするとあのお宅のクチナシの木への移動の途中だったのかもしれません。
また飛んでこないかな~と願っています。
クチナシの花盛りはまだまだ先のことですが......

画:「クチナシ」吉田 桂子
文:吉田 桂子

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