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2021年タイトル花

2021年タイトル花

12月のタイトル花

エピデンドラム ポーパック

エピデンドラム ポーパック

最近またランの絵を描きたいなと思っています。
「また」と言うのは、以前描いていたという事なのですが、最近あまり描いていませんでした。ボタニカルアートを描き始めた頃は、まだ企業デザイナーをしていて、蘭は比較的変化の少ない植物ですから仕事をしながら描く私にとって大変ありがたい植物でした。

ラン科は科目としても大きな科目ですから、色々な属があり植物を学ぶには最高の題材でもありました。そして20年程前、地元の横浜に戻る頃、当時はブラジルのカタセタムに大変熱を入れており数十株はありましたが、環境の変化で蘭も私も対応出来ず、全ての株を枯らしてしまいました。

それから......蘭を描く事もなくなってしまいました。しかし、最近お教室の生徒さんがカタセタムを描いているのを見て心の中にしまい込んでいた何かが湧き上がってきたような気がします。伺ったところ、現在はカタセタムはネットで簡単に入手できるようで、私が集めていた20年前とは事情が全然違うようです。

そうそう、この蘭の話をすっかり忘れてました。
この蘭は「エピデンドラム・ポーパック」と言い、とても小さな蘭で私の好みの地味で可愛い花を咲かせます。いわゆる球状のバルブは作らずに太い茎に小さな花を沢山つけて、少しスズムシ草に似た花を咲かせるのです。

小さいのに一人前の花をつけていると何かぐっときます。
一人前という言い方は良くないですね。
小さい花の中にラン科植物の特徴となる形をしっかり備えているのを見るとドームハウスやミニチュアスイーツを見る時と同じ気持ちになってしまいます。これから蘭を描き始めるにあたって小さく可愛い蘭を描いてみようと思います。

画:吉田桂子「エピデンドラム ポーパック」
文:吉田桂子

11月のタイトル花

赤実のチョークベリー

赤実のチョークベリー

カマツカに姿の似た赤実のチョークベリーは、春になると小さな白い5弁の花を咲かせます。白い花弁とは対照的な赤い葯は、虫たちを花へ誘うために神様が色付けをしたのかもしれません。そして夏を越え、秋となり冬の足音が近づく晩秋ともなると葉と実は春の葯と同じく赤く染まります。

木枯らしが吹き、美しい葉が飛ばされて無くなってもチョークベリーの赤い実は、なお一層赤味を増し、深いワインレッドに変わってゆきます。

50才を半ば過ぎ、人生について......生き方について色々考える事が増えたように思います。若い頃と同じようにいかずもどかしく感じる事、若い頃は許せなかった事に寛容でいられる自分を発見したりします。まだまだしぶとく若い人達と頑張るぞ!!と思ったりしもします。

晩秋に深く赤味を増し、美しく枝に残る赤実のチョークベリーの実......
風雪に耐え又めぐり来る美しい季節を待つ姿につい自分の人生を重ねてしまう今日この頃です。

画:吉田桂子「赤実のチョークベリー」
文:吉田桂子

10月のタイトル花

バラ ザ・リーヴ

バラ「ザ・リーヴ」

このバラはデビッドオースチン産出のイングリッシュローズ「ザ・リーヴ」です。春は大きな花を一輪そして秋は小ぶりで濃桃色の花を数個茎頂に咲かせます。

しかし...今年は...ずっと大きく、濃桃色の花を、そして沢山茎頂に咲かせました。気候変動のせいでしょうか?...悪い事ばかりでは無いようです。

51年続いた新宿小田急百貨店でのボタニカル・アート展は令和3年10月で終わりました。この作品はその展示で発表いたしました。

今年は内容の濃い作品を発表したつもりでしたが、やはり私には大きな作品のイメージがあるようで「今年は大きな作品はないのですか?」と沢山の方にお声掛けいただきました。

来年の日本ボタニカルアート展は2022年12月28日から23年1月7日まで新宿京王プラザホテルにて開催を予定しております。

来年は少し大きな作品を出品したいなあ~と思っておりますが...どうでしょうか...また近くなりましたらご案内したいと思っていますのでよろしくお願いいたします。

お忙しい中、展覧会に来て下さった皆様、ありがとうございました。

この場を借りてお礼申し上げます。

画:吉田桂子「バラ ‘ザ・リーヴ‘」
文:吉田桂子

9月のタイトル花

エケベリアブラックプリンス

エケベリア ’ブラックプリンス‘

多肉植物が流行しはじめ、植物男子やベランダ―なんて言葉を耳にするようになって久しく思います。このエケベリアは行きつけの植物店、ヨネヤマ・プランテーションで購入しました。購入時に丁度多肉フェアーを開催しており、その中でお気に入りのこの子を発見しました。

名前の通り、葉が黒紫色を帯びるエケベリアのようで、私が描いた個体よりもっともっと‘ブラックプリンス‘!!もいるようです。

葉とは対照的なオレンジピンクの小さな可愛らしい花を咲かせます。
葉も花も補色のグラデーションと言うか、2色の相異なる色が重なり合うニュアンスのある美しい色をしています。

そして質感は、マットのような光沢がある不思議な質感です透明水彩の持つ画材の特性を十二分に引き出してくれる植物で、まるでジキル博士とハイド氏のような怪しい魅力をたたえた植物です。

画:吉田桂子「エケベリア ‘ブラックプリンス‘」
文:吉田桂子

8月のタイトル花

ショウジョウソウ

ショウジョウソウ

どうしても覚えられない名前があります。
それがこの植物「ショウジョウソウ」です。
秋が来て冬が終わり、そして春が訪れ夏が来ると我が家の庭はこの植物が咲き乱れます。

始めて見かけたのは自宅近くの庚申様の祠の前でした。
手を合わせて種を持ち帰っても我が家に居つく事はありませんでした。
そしてその話を植物画教室でしたところ、生徒さんが苗を分けて下さいました。それから何回か夏を過ごした事でしょう......あんなに欲しくて分けて頂いた植物なのに、夏が来るたびに「なんて名前だったっけ......?」と思います。「タイマツソウだっけ?」違うな「カガリビソウだっけ?」ちがうな......いつもこれを繰り返し図鑑をひいて「あ!ショウジョウソウだった」......という事になるのです。

この植物はポインセチアの仲間で、日本の植物だとハツユキソウの仲間になります。きっとこのオレンジの美しい斑が私には炎のように見えてしまうようです。でもいつも大切にしている芸術家、岡本太郎氏の言葉で「名前なんて記号にしかすぎない」本当にそうです。この「ショウジョウソウ」の美しさは言葉では表現できません。

画:吉田桂子「ショウジョウソウ」
文:吉田桂子

7月のタイトル花

礼文ウスユキソウ

礼文ウスユキソウ~ハイジの丘にて~

2014年の7月のタイトル花は同じく礼文ウスユキソウでした。
前回の作品を描いた場所は「星の丘」という場所です。
人々に踏み荒らされて現在は植生復旧の為に丘に入ることははできません。

今回の作品はキューガーデンで行われた展覧会の為に描いた作品です。このウスユキソウ達は「ハイジの丘」に生えている個体です。ハイジの丘はあちらこちらに崩落があって、ここ数年入れないこともあるようです。

礼文林道から礼文滝へ向かう途中にある丘で、向かい側にはペーターの谷もあります。チョウゲンボウがゆっくり飛び、谷から丘へ風が渡ってきます。丘の頂に立ち目を閉じると、本当にハイジになったような気持ちになります。クララのお友達として都会に連れて行かれたハイジ...アルムの山に帰りたかったハイジ......私も礼文島に帰る事ができなくなって2年が過ぎました。

常宿のオーナーに「お帰りなさい!!」と言ってもらえるのはいつになるのか......

来年の今頃は北の小さいな島の丘にたっていられるでしょうか......

画:吉田桂子「礼文ウスユキソウ」
文:吉田桂子

6月のタイトル花

ゼラニウム

ゼラニウム

昭和レトロ......若者の間ではアンティークまではいかなくても、もはやヴィンテージと言われるほど前になってしまいました。

今は社会がグローバルになり、世界中から珍しい植物が手に入ります。昭和は自宅に温室がある人も少なくて、植物を手に入れる時は冬越し出来るかどうかが入手する時の大切な要素でした。最近は気候変動の影響もあり、植物を入手する時は耐暑性はどうか気にします。

そんな時代、子供の私にとって洋風の植物、南国?の植物のイメージがあったのがゼラニウムでした。

美しい色の花を次々と咲かせ、少し変は匂いのするその植物は、冬になると家の中に入れて大切にしてもらっていました。今はほとんどのゼラニウムが軒下で冬を越すことができます。

この作品のゼラニウムは「アメリカーナ・シリーズ」と名がありましたが、このシリーズと言う言いかたは要注意です。流通用のグループ名である事が多く、ひとつひとつは全て異なる種名の植物である事が多く見られます。

作品ひとつひとつの花を見てわかるようにそれぞれの個性があり、美しい花を咲かせます。「名前なんて何の意味もない!!」けれどひとくくりで言われてしまうと「ひとつひとつに名前をつけてあげて欲しい」と思ってしまうのです。

画:吉田桂子「ゼラニウム」
文:吉田桂子

5月のタイトル花

ドイツスズラン

ドイツズズラン

この作品はずい分と前に描いたものです。この個体は花屋で購入した鉢植えのドイツスズランです。スズランには毒性があり。よく誤食の話を聞きます。この作品を描いていた頃「どうして間違えるの?」と思っていました。当時の私はフィールドワークもまだまだで、野生の日本スズランと出会う事が少なかったからなのです。そしてその考えは私の第二の故郷礼文島に行くようになって一変しました。

礼文島では日本スズランが多く自生しています。島の西側の海岸線に多く生えているようです。地質は草地にも生えますが、ガレ地の方が群生している気がします。

そして話は戻って誤食の話です。
礼文島の草地では色々な花々が咲き乱れます。ある区域では日本スズランと行者ニンニクが同時に見られます。という事は......そうなんです。日本スズランと行者ニンニクは一緒に生えている可能性があるということなのです。しかし、ここ礼文島はもちろん、日本全国に採取が禁止されている地域があることは言うまでもありません。

そしてこの日本スズランなのですが、私の作品のドイツスズランとは少し違います。葉もやや丸く、襞も少なく、広げた葉を良く見ると行者ニンニクに似ているようにも見えます。植物にあまりくわしくない人が花のついていない早春の日本スズランと行者ニンニクを見たら、確かに間違ってしまうかもしれません。素人考えの同定はとても危険なことなのです。

野山の恵みをいただく......最高の贅沢ですがこの贅沢をいただくにはやはりプロの案内人が必要そうです。

画:吉田桂子「ドイツスズラン」
文:吉田桂子

4月のタイトル花

シマツルボ

シマツルボ

6年程前......急に決まった自宅の建て替えでした。
木々も沢山切らなければならなくなり、草木類は急いで引っ越しとなりました。庭の引っ越しは古い家を解体するまでの3日間と限られておりました。

あまりに短い時間ゆえ、以前ガーデンアイランドで個展をしていた時にお世話になった方が、フリーガーデナーになっておられたので、泣きついて何とか珍しい植物を救出して植替えを行いました。もちろん限られた短い時間でしたので、移植をあきらめた植物も沢山ありました。そのひとつがこのシマツルボです。

シマツルボは小さな球根からヘビの様なシマのある、艶やかな葉を出し、花柄の先に濃い桃色の花を咲かせます。あわただしい引っ越しの中、球根を見つけられなかった事が今も悔やまれます。

最近はネットで何でも買える世の中になりました。
先日、思い立ってググってみると、ありました!山野草として売られている様です。

ターシャテューダー曰く「庭は1日にしてならず......」だったかしら?
父から受け継いだ庭はやっと私らしくなってきました。もう少ししたら我が庭にシマツルボをお招きしようと思います。

画:吉田桂子「シマツルボ」
文:吉田桂子

3月のタイトル花

ブーケ

美しい庭

3月を迎えると我が家の庭は一番美しい季節が訪れます。
30株程のレンテンローズが一斉に咲き乱れ、ヒヤシンス、ロムレアフラバ、バイモユリ、シュンラン、ニリンソウ、アネモネ......え~とあとは何があったかしら......ともかく沢山の春の花が咲き、心が浮き立ちます。

天気の良い日は庭の中をうろつき、ムサシアブミやカリカンサスの芽をじ~っと眺めては初夏の美しい庭を更に妄想したりするのです。
そして近所のノラ猫と会話したりしているうちに時が過ぎ、気が付くと30分なんてすぐに過ぎてしまいます。

この作品はそんな小さくて可愛い私の庭の一番美しい季節を描いた作品です。昨年10月に新作として小田急百貨店で行われた日本ボタニカルアート展で発表した作品ですが、コロナ禍という事もあり、ご覧になれなかった方もいらっしゃると思います。

私の美しい庭をお届けします。

画:吉田桂子「ブーケ 美しい庭」
文:吉田桂子

2月のタイトル花

デンドロビウム シルシフローラム

この花に出合ったのはいつの事だったでしょうか.......
それよりも前にまず、出合うと言うより......探していた事を思い出しました。

私がまだボタニカルアートを描きはじめたばかりの30年近く前に時は遡ります。当時はまだ大手アパレルで服飾デザイナーをしながら、画家になる事を夢見ていました。イギリスのアンティークが大好きでコスチュームジュエリーや洋書や古書そしてボタニカルアートのアンティークを買い集めていました。そんなある日の事、洋書の1ページに気になる植物を発見しました。

当時は仕事が忙しく出張や会議に追われながらボタニカルアートを描いておりましたので、変化の少ない蘭を描く事が多かったのですが、その時見た花の名はデンドロビウム・アグレガタムだった様に記憶しています。

当時盛んに行われていたラン展などでも下垂性の花穂をつける蘭は大変珍しく、見つけても入手出来る様な価格ではありませんでした。そんな事を繰り返しているうちに出合ったのがこのシルシフローラムです。

人目惚れをして購入。躍る気持ちで楽しく描きました。そしてあれからずいぶんと時が経ち、あの時の様に躍る気持ちで描く事が減ったきがします。
それはきっと植物との出合いが減ったからかもしれません。

良い絵を描きたい。そんな気持ちから昨年はボタニカルアートの教室を減らしました。感染症の影響もあり、植物との出合いを求めて活発に活動する事は出来ませんでしたが、きっとその時はまたくるはず......

心躍る植物との出合いを春の訪れを楽しみに過ごしています。

画:吉田桂子「デンドロビウム・シルシフローラム」
文:吉田桂子

1月のタイトル花

黄実のセンリョウ

黄実のセンリョウ

その昔、我が家の庭には大きなイロハモミジの木がありました。
今で言うところのシンボルツリーでしょうか......その木の株元には赤実と黄実のセンリョウの他、トクサ、ヤブコウジ、日本スイセン、スズラン、プリムラetc......と早春を楽しむ植物が植えられていました。お正月を迎えると2色のセンリョウを紅白に見立てて生けては床の間に飾って愛でたものです。

数年前に自宅兼アトリエを建て替えた折に、そのシンボルツリーも早春の植栽もなくなってしまいましたが、慌ただしい工事の中救出した黄実のセンリョウが最近やっと根付き、芽を出しました。まだ30cm程の茎が1本ですが、確実に根を張っている様です。

昨年は本当に色々な事がありました。でもいつも植物は変わることなく1日、1日を営んでいる様です。その変わらぬ姿に力をもらい、今年一年も頑張りたいと思います。

画:吉田桂子「黄実のセンリョウ」
文:吉田桂子

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