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2019年タイトル花

2019年タイトル花

12月のタイトル花

ヒペリカム

ヒペリカムの実

切り花で良く売られているヒペリカムの実と枝。
実際の時期はもう少し早い様に思いますが、皆さんはヒペリカムの花をご存知でしょうか?とりわけ実ばかりが注目されがちなヒペリカムですが、日本のオトギリソウの仲間で黄色い花弁に黄色い花糸を綿帽子のようにこんもりと着け、とてもかわいらしい花を咲かせる植物です。実がなんとなくクリスマスカラーなのでこの時期に飾りたい作品です。

赤く美しい実もさることながら私はヒペリカムの葉が大好きです。
まずは対生の大きな葉、基部は茎を抱き、対生の葉の基部は癒着しているかのように見えます。そして葉脈、葉はほぼ全縁にもかかわらずはっきりした沢山の葉脈が見られます。

そして最後に色、深くやや黒ずんだ様な青緑色の葉は赤い実の脇役として十分すぎる役割を果たしています。

画:ヒペリカム 吉田 桂子
文:吉田 桂子
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11月のタイトル花

シロダモ

シロダモ

今から20年ほど前に東京は大田区の池上という所に住んでいました。
日蓮上人に所縁のある場所で、お寺がたくさんありました。お寺の周りには木が多くありその中に美しい赤い実をつけている木を見つけました。

自宅に帰ってから図鑑で調べるとシロダモという植物であることがわかりました。いつか描きたいと思い描いていると、知人からシロダモの枝が一枝送られてきました。私が描きたがっていたことを頭に留めておいてくれたそうです。その時送られてきた一枝がこの作品のモデルです。
この作品は実だけの枝を描いたのですが、植物学的に描くためには少し要素が不足しています。

シロダモは雌雄異株です。なので本来はその表現をするために雄花と雌花を別々に描かなければなりません。そして花は10月から11月頃に咲くのですが実は1年をかけて熟し赤くなります。ですから前年の実と花か重なる事も出来れば説明しなくてはなりません。

このようにボタニカルイラストレーション(植物図)として科学的に植物学的に描くためには事前学習がとても大切なのです。

しかし......時には目の前にある美しい個体を描くそんな事があっても良いと思います。ボタニカルアート(植物画)とはそのような絵画ですから......

画:シロダモ 吉田 桂子
文:吉田 桂子
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10月のタイトル花

バンダ・ジェーン

バンダ・ジェーン

ボタニカルアートを描き始めた頃は私はまだファッションデザイナーをしていて、毎月が忙しく変化の大きな植物を描く事は難しい状態でした。

その頃、私に素敵な絵を描かせてくれたのは沢山の洋蘭たちでした。洋蘭を描くようになって色々な蘭博や蘭園に出掛けては自分の知識不足を埋める様に努力しました。そんな中で、ある洋蘭園を訪れた時の事大変珍しいバンダに出合いました。

バンダと言えばローズピンクや青紫色の単色の花を思い浮かべる方が多いことでしょう。私も初めはそうでした。

しかし、そこに咲いていたのは2色使いの美しい花でした。
それから花屋でバンダを見かけると「あの美しい2色使いのバンダはないかしら?」と探すようになっていました。

そしてついにこの花に出合ったのです。

私が初めて見た2色のバンダより少し桃色の部分は淡い個体でしたが、モデルとしては申し分ない美しい花色で、思わず自宅に連れて帰り描きました。

現在は画面内に学名を表記する事はしない様にしていますが、この時はあまりに美しい花でしたので植物名をフォーマルスクリプトでデザインして描いています。学術画のジャンルでは学名を書く際には様々なルールがあります。しかしこれはあくまでも観賞画として描いているのでルールは無視して描いています。

画:バンダ・ジェーン 吉田 桂子
文:吉田 桂子
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9月のタイトル花

コウメバチソウ

コウメバチソウ(エゾウメバチソウ)

礼文島の晩夏から初秋にかけて咲く花コウメバチソウ(エゾウメバチソウ)
の作品です。わざわざ和名を二つ書いたのには理由があります。

あれは2004年9月5日のこと。
礼文島に通い始めてから初めての秋でした。いつも訪れていた花の季節とは違って、人の姿も少なく落ち着いた島の空気になっていました。

画板を背負って歩いていると、ウメバチソウが咲いていました。
白く上向きの可愛い花に惹かれて、そこに座り込んでウメバチソウを描き始めました。

ウメバチソウという花はもちろん以前から知っていましたが、作品として描くのはこの時が初めての事でした。

自宅に帰ってから疑問点が無いよう、しっかり観察しながらデッサンしました。花の中心には雄蕊の他に仮雄蕊のようなものが付いていました。
「へぇ~何本あるんだろう?1,2....」その時はいつものつもりで仮雄蕊の本数を数えて描きました。

旅から自宅に戻り図鑑を再度確認しながらデッサンを清書しているとある事に気づきました。

図鑑にはコウメバチソウの仮雄蕊は7~9本、ウメバチソウは15~22本とあります。「んっ?」私の描いたウメバチソウの仮雄蕊は7~11本の個体だったのです。「そういえば10~14については何とも書いてない?!」
ここで疑問が大きくなってきました。そしてある図鑑の中に「仮雄蕊が9~14本に分かれているものをエゾウメバチソウと呼ぶ」という記載を発見しました。

植物とは本当に不思議なものです。地域性があり多様性がありひとつひとつがまるで何かの戦略をもって生えている様です。
自然の前ではいつも謙虚にそして基本に忠実に描かなくてはいけないと実感した出来事でした。

画:コウメバチソウ 吉田 桂子
文:吉田 桂子
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8月のタイトル花

エゾツツジ

エゾツツジ

このエゾツツジは栽培種です。
礼文島でエゾツツジを群落を描く前に習作として描いたものです。

珍しい植物、難しい植物を描く時や、屋外や旅先など短い時間で描かなくてはいけない時はなるべく習作をする様にしています。
こうすることで事前に観察しておくことが出来るので限られた条件の中でもしっかり描く事が出来るのです。

このエゾツツジを描いた後に私は礼文島のハイジの丘でエゾツツジの群れを描きました。ここは崖沿いの作画しにくい場所でしたが美しい作品を描く事ができました。しかし現在この場所は植生の復旧のために立ち入りが制限されています。

作品を見るたびにハイジの丘に揺れるエゾツツジを想います。
今年は礼文島の春が早く終わってしまったと聞きました。

夏はどうだろう?私の心の中を礼文島の風が吹きぬけてゆきました。

画:エゾツツジ 吉田 桂子
文:吉田 桂子
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7月のタイトル花

戸隠ユリ

戸隠ユリ

私は単子葉の植物を描くのが好きです。
何故かはわかりませんが、なんとなく惹かれて描いていると単子葉だったりするのです。

とりわけユリ科の植物は大好きで、この戸隠ユリは山野草店で衝動買いして描きました。その後、庭に植え付けたのですが最近芽を出さなくなってしまいました。あっ!そう言えばササユリもいつか描こうとずっと鉢植えにしていたのを庭に植え付けたら出てこなくなってしまいました。やはりここ数年の夏の暑さがいけないのかもしれません。私の暮らしている横浜は戸隠とは違って暑いですからね...

この戸隠ユリの「戸隠」と言う部分は和名として不確定な名前のようです。
一番無難な和名はホソバコオニユリだそうで....赤毛のアンに言わせれば「想像の余地のない」....名前です。

私も仕事で植物名を表記する時はカタカナを用いてなるべく正確な和名を表記するように心がけています。

しかし最近は....自由に文章を書く時くらい.....想像の余地のある名前にしたいと思います。

戸隠ユリ....きっと今頃は戸隠の涼やかな風に吹かれて揺れていることでしょう。

画:戸隠ユリ 吉田 桂子
文:吉田 桂子
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6月のタイトル花

ストレプトカーパス

ストレプトカーパス

このストレプトカーパスは我が家のハンギングバスケットに植えられています。もともとは生徒さんに頂いた一枝でした。
さし芽にして大きくし、茎をあちらこちらに広げるとまたその茎をさし芽にしてどんどん大きくしました。

私はさし芽が得意な方で、これは父譲りかもしれません。
さし芽を成功させるポイントは二つあるような気がします。

一つ目はさし芽でつきそうな植物を選ぶ事です。
当たり前の事ですが、これが結構難しいのです。そういった意味ではストレプトカーパスは条件を満たしている気がします。

茎が髄質で折れやすく、なのに下方は木質化に近くなります。
そして産毛が多い事もそうです。自力で保水が出来て、なおかつ根を出す節が多くあるとさし芽に向いている様な気がします。

そして二つ目はさし芽をする時の手順です。
用土選び、下ごしらえ、さし方などコツが沢山あります。これはここに書くと長くなりますのでまた折を見てお話しましょう。

空を見上げ梅雨入りが気になりだす頃、我が家の庭の花色は赤味から青味へ変化します。緑白だったアジサイに青色が出始め、美しく大きな花を咲かせるストケシアが花首を伸ばし始めます。

そしてストレプトカーパス

美しいパーマネントグリンの茎から細い細花柄を出しその先に不釣り合いなほど大きくかわいい形の花を咲かせます。

雨に良く似合うこの青紫色の美しい花が私は大好きです。

画:ストレプトカーパス 吉田 桂子
文:吉田 桂子
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5月のタイトル花

シャポー・ドゥ・ナポレオン

シャポー・ドゥ・ナポレオン

このバラの学名はR osa centifolia var. cristataですが
私はこのシャポードゥナポレオンと言う呼び方が大好きです。このバラにはもう一つ言い方がありますそれはモスローズです。

正確にはこのバラのグループの名前です。
この名前の由来は萼片が苔の様な形をしているからです。
シャポードゥナポレオンも萼が独特の形をしていて苔というほど細かくはありませんが通常のバラの萼よりはかなり苔っぽく細かく切れ込でいてその形がまるでナポレオンのシャポー(帽子)の様なのでこの名前がついたのです。

子供にはピーターパンのフック船長の方が分かりやすいかも知れませんね。
このように薔薇には学名以外の呼び名があるものがいくつかあるようです。
私が好きなバラの一つロサムンディも学名以外の呼び名です。
確か王女様の名前だったと思うのですが、、、
皆さんも是非別名を持つ薔薇を調べてみて下さい

画:シャポー・ドゥ・ナポレオン 吉田 桂子
文:吉田 桂子
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4月のタイトル花

ユスラウメ


ユスラウメ

ユスラウメ

ソメイヨシノの開花予想が気になりだす頃、我が家の庭ではユスラウメが花を咲かせます。ウメとついていますが花はまるでサクラの様に可憐です。
樹木の形や花の付き方でこの名がついたのかもしれません。

そして八重桜が始まる頃にはユスラウメの花は散ってしまいます。
庭にはまるで春雪の様にユスラウメの花びらが敷き詰められます。
行く春を惜しむようなその姿は少しセンチメンタルな気持ちにさせます。

しかし、ツバメが高らかに鳴き、初夏を迎える頃になると今度は真赤でまるでミニチュアのスモモのような可愛い実を付けます。

子供の頃おやつ代わりによく食べました。皮はパリっとしていて中にはジューシーな果汁を蓄えた果肉が入っています。実の割には大きな種がひとつぶ入っているのですが、沢山の実を口にほおばっては「ぺッペッペッ」と庭に種を飛ばしていました。

とても発芽率が良く、数十年経った今でも我が家の庭には数本のユスラウメが生えています。

画:ユスラウメ 吉田 桂子
文:吉田 桂子
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3月のタイトル花

ムスカリ

ムスカリ

4種類のムスカリを寄せ植え風に描いた作品です。
この作品に私の心を導いてくれたのは、正面奥に描かれている大型のムスカリです。ムスカリには珍しく広葉の品種です。ちょっと遠くから見ると小さなヒヤシンスのように見えます。私の大好きな紫色です。

中間に描かれている2品種は私はあまり好きではない品種です。どこがかと言うと花の咲き方です。私は勝手に「トサカ咲き」と呼んでいるのですが、上方に付いている一部の花が下方に付いている花より先に咲いてしまう形がなんとなく好きになれないのです。こんなにかわいいお花なのにゴメンナサイ。でも絵を描くと不思議と好きになってしまいます。

そして手前にある白い花....これは一番ベーシックなムスカリの白花です。
紫の花の力強さとは違って儚げな雰囲気が早春に映えます。最近は花屋で小型のチューリップの珍しい品種も見かけます。機会があったらこのムスカリ達と同じ構図で「小型のチューリップの色々」の作品を描いてみたいなぁーと思っています。

画:ムスカリ 吉田 桂子
文:吉田 桂子
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2月のタイトル花

レンテンローズブーケ

ブーケ
いつ頃から描き始めたことでしょう。5年近く前だったでしょうか...?
ブーケはボタニカルアート作品の中でも私が得意とする作風のひとつです。でも作品制作にには時間がかかります。同じ季節の花を描くという事は、花が一斉に咲くという事で...つまり急いでデッサンをしなくてはなりません。しかし私は写真で描く事が少ないので、当然ひと春では描ききる事が出来ないので、春を何度も過ごしてこの作品は出来上がりました。

大好きなクリスマスローズとレンテンローズをまるで大きな花瓶に活けるかのように描き始めると楽しくて絵がどんどん大きくなり、こんなに大きくなってしまいました。

絵を描いているとすごく苦しい思いをする事があります、でも時には肩の力を抜いて楽しく描く事も大切だなあと思う今日この頃です。

2月中旬頃にこのブーケの彩色手順をご紹介する予定です。
お楽しみに!!

画:ブーケ 吉田 桂子
文:吉田 桂子
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1月のタイトル花

シュンラン

シュンラン
春の蘭と書いてシュンラン...なんてステキな名前でしょう。
この植物を見ると、年末年始の落ち葉かきを思い出します。私の父が健在だった頃、父は菊花栽培をしておりました。菊花栽培には大量の腐葉土が必要となるため、庭の一角で腐葉土作りをしていました。当然ですが腐葉土作りには沢山の枯葉が必要です。年の瀬が近くなると近所の里山の所有者にお願いをしてケヤキなどの落ち葉を頂いていました。

父は竹籠を背負って手には熊手を持ち、私は愛犬のリードを持って里山に出掛けたものです。父が枯葉を集めている間、私は愛犬と里山散策をしていると、アオキやヤブコウジに紛れて、シュンランも生えているのが見られました。昭和40年代の横浜にはまだまだ自然が多く見られたのです。

現在、自宅からほど近いこの里山は所有者が市に山を寄贈したために公園となりました。愛護会の方たちが熱心にお手入れをされていて、何とか里山が守られています。しかし....あの里山の様にまるで雑草のようにシュンランを見かける事はもうありません。

一度失った物を取り戻すことはとても難しいことのようです。
でも....自宅の庭から遠くに見える里山の木々を見つめながら心の中に花を咲かせています。

画:シュンラン 吉田 桂子
文:吉田 桂子
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