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第33回ークリスマスローズを描く

第33回ークリスマスローズを描く

Helleborus×hybridus

完成画 Helleborus×hybridus

最近ガーデニングでも人気の高いクリスマスローズですが
私たちがよく目にするのは、ほとんど遅咲きのレンテンローズ(注1)の系統。
我が家にある早咲きのヘレボルス・ニゲル(注2)はクリスマスの頃に白いつぼみを出して、新年を迎えた後にゆっくりと咲き始めます。
庭に花のない年末から春が来るまで、長い期間楽しませてくれる花クリスマスローズ。難しい構図、花や葉の描き方を学びます。

注1:ヘレボルス・オリエンタリスの英名。
注2:本来はニゲルのみがクリスマス・ローズと呼ばれる。

不思議で魅力的な姿

ヘレボルスを描く時の観察のポイントを説明します。
まずは有茎類か無茎類かを確認します。なにやら難しい用語のようですが、植物を見なれた皆さんならすぐに理解出来る事でしょう。

有茎類、無茎類かを確認する事は構図を決める上でも大変重要です。
字のごとく有茎類は茎があり、茎葉がつき、そして茎頂に花を咲かせます。フェチダスやアーグティフォリウスなどの緑色のヘレボルスに多く見られる形です。無茎類も字のごとく茎はなく葉と花は根生します。一般的に見られるヘレボルスはこのタイプです。いずれにしても地面から植物が出ているところに特徴がありますので、科学的価値のある絵を描くためには植物全体を描く必要があります。

本物の花弁はどこに!?

次に花の観察ですが、誌上コンクールでも完全な花が描かれてない作品が時折見受けられます。ヘレボルスはセツブンソウやオダマキ等と同じキンポウゲ科の植物で、とても美しく大きな萼を持つために、中にある小さな花弁を見落とされてしまうことが大変多いようです。ほとんどの品種は下向きに咲くので、少し見上げた構図にしないと花の内側にある花弁を描くことが出来ません。

デッサン

前述の観察ポイントをふまえたら、花弁や雄蕊が落ちてしまわないうちに描きましょう。無茎類の場合は、葉が大きく広がっているので、一枚は完全な形で葉全体が入る位置で描くよう心がけて下さい。そうすれば他の葉は多少画面の外に切れてしまっても構いません。そして葉脈は比較的はっきりしている植物なので、二次側脈ぐらいまではデッサンで入れておいて下さい。そして当然ですが鋸歯の形状も丁寧に描いておきます。

花のデッサンは雄蕊と雌蕊を正確に描きます。雄蕊はたくさんあり広がった状態を描くのは難しいので、咲きたてで花糸があまり広がっていない雄蕊を描くと楽に描けます。

彩色ー葉と茎柄

ヘレボルスの葉や茎には赤みを帯びたものがありますが、まずは緑色と思って彩色をして、後で赤みの部分にやや明るめの赤を彩色します。しかし最近人気のワインやブラックの花色のヘレボルスは、葉がかなりの赤銅色をしているものが多いので、最初の段階から赤銅色で彩色します。

彩色ー花

いよいよ魅力的な花の彩色です。基本的にはどの品種も同じで、まず萼、次に花弁、次に雌蕊、雄蕊と彩色します。奥にある部分から彩色するという基本も忘れずにいて下さい。つまり、雄蕊や雌蕊が手前にある萼で隠れている場合は、手前にある萼の部分を一番最後に彩色します。

そして萼を彩色するにあたって、二つの手順があります。中間色から濃色の花色の場合は、見たままの色で手順を踏まえて彩色して下さい。しかし淡紅色やピコティ(縁が濃い品種)などは、まず白い萼の花と思って彩色して(図1)、その後に模様や色を描き加えると簡単です(図2)。

図1

図1

図2

図2

あとがき

最近、私のお教室ではブーケやリースを描く方、鉛筆やペンでモノトーンの世界を描く方、さらに虫や水滴などを描く加えたりする方と、皆さん自由に楽しくボタニカルアートを描いています。

私の英国でゴールドメダルを頂いて以来、ボタニカル・アートに対する考え方が大変変わりました。日本では何か新しい事をするとすぐに否定される事が多いように思います。もちろんコンクールや図鑑用の絵は一定のルールを満たしたものでなくてはなりません。しかし個人的に描く作品は少し自由に考えて良いのではないでしょうか?大切なことは植物を愛しみ、自分に正直に楽しく描くことではないかと思います。

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