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第29回ーキキョウを描く

第29回ーキキョウを描く

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日本には青紫色の花がいろいろあります。
特に秋の七草のキキョウはその代表的な花です。
最近の花屋さんはなんでも早めに出回ります。
ひょっとすると「ちょうど今描いている!」なんて方もいるかも知れませんね。青い花は青い鳥といっしょで、幸福を運んでくれるような気がします。
今回は小品ですが、一輪でも力のあるキキョウの描き方をご紹介します。

はじめに

夏のある日、庭の草花をながめているとキキョウにそっくりな葉が出ていました。なんでここからこんな形の葉が出ているのだろうと思いながら、確認の為に花が咲くまでに抜かずに待つことにしました。しばらくして、雑草かどうかわからないその植物の事を忘れかけた頃、一輪の大きな青紫色のお星さまが庭に輝いていました。細い茎に不釣り合いなほどの大きな花は昨年の秋に描きそこなったキキョウのポット苗を庭に植えておいたことを思い出しました。忘れていた私に「今年こそ描いて」とキキョウが語りかけているような気がしました。

鋸歯に気をつけてデッサンを

朝のうちに切り花にしたキキョウを、一日でデッサンしました。こんな小さな題材ですが、5時間以上かかりました。特に5裂になった花の切れ込みが難しく、手前の切れ込みの角度を広めに描き過ぎてしまうことが多いので、注意して描きました(図1)。

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茎、葉柄、葉脈、鋸歯などの細部も丁寧に描きます。特に鋸歯の形を手のクセで描かないようにして下さい。図鑑を読むと必ず葉の形状の記述があります。これと違わない様にデッサンは描かなくてはなりません。なるべく正確に描くよう心がけて下さい。

彩色ー葉

キキョウの葉は白味を帯びた独特の色をしています。色はサップグリーン、プルシャンブルー、ミネラルバイオレットの混色でできていますが、混色の際にプルシャンブルーとミネラルバイオレットの配色を増やします。そして彩色する際にはたっぷりの水で絵の具をうすめて淡い色で彩色します。淡い色で彩色していき、全体的にも淡い仕上がりとなりますので、必ず鉛筆の線の上まできちんと彩色して下さい。絵の具がはみ出したり、鉛筆の線の内側に白い隙間ができたりすると、途中で描くのを止めてしまったような絵になってしまいます。彩色回数が少なく、淡い仕上がりの絵ほど丁寧に描く事が重要です。

彩色ー花
花の彩色をする際、特別な場合を除いてはおしべ、めしべは一番最後に彩色します。このキキョウの場合も花弁を先に彩色します(図参照)。

①まず花弁全体の陰影を彩色します。この美しい青紫は、ホルベインブライトバイオレットとウルトラマリンディープで作ります。この色が無い方は、オペラなどの鮮やかなピンク系の色とセルリアンブルーやコバルトブルー等青系の色の混色で表現します。いきなり画面に塗らずに、何度も良い色が出来るまで試し塗りをしてください。

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②花弁全体の陰影がついたら、花弁に見られる葉脈のような模様をいれてきましょう。模様は全て入れてしまうと、①で彩色した陰影がなくなり、平板な花になってしまいます。ですから、模様は①の作業で影をつけた上に描き込んで下さい。光っていて淡く彩色した場所は模様も淡く描きましょう。

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③おしべ、めしべを彩色します。おしべの花粉の入った袋は白の絵の具を混ぜて作ります。そして何度も何度も重ねて彩色することで花粉の入った袋(やく)の質感に近づきます。

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最後に...仕上げのコツ

白い花や、淡い色の植物を描く場合、彩色が終了してもなんとなく物足りない感じがするときがあります。そんな時は仕上がった後、もう一度鉛筆で輪郭や葉脈をきちんと描きます。そうすると、必要以上に色が濃くならずに絵がはっきりしまう。ただし、水彩で彩色した上に鉛筆で描く場合は、鉛筆の色が黒光りしやすいので少し硬め(2H,4Hなど)の鉛筆で、細く描いてみてください。

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