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第19回ーハイビスカスを描く

第19回ーハイビスカスを描く

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ハイビスカス「フラミンゴ」
Hibiscus sp.(アオイ科)

子供の頃、ハイビスカスは異国の花。
タヒチやハワイなどの遠い南の国の花と思い込んでいました。
最近は色々な品種が簡単に入手出来ますが、
私はフラミンゴという品種が大好きです。
ハイビスカスの葉は屋根のようにデコボコしています。
この葉の描き方を中心に学んでいきましょう。

主役はやはり花

葉の描き方を中心に...と申し上げましたが、何と言ってもやはり花が主役ですよね。ハイビスカスはアオイ科の植物ですから、基本は五数性です。5裂のがく片、5枚の花弁、めしべの柱頭は5裂です。おしべの付き方は少し変わっていて、めしべの途中から花糸をたくさん出し、その先に葯がついています。私の好きなフラミンゴは、このおしべの花糸の部分が弁化して、美しい形の花になっています。アオイ科に属するムクゲにも、同様に八重化した品種があります。園芸種は複雑な形をしているものが多くありますが、原種を知る事で複雑な形よりも深く理解して、正確なデッサンが描けるようになります。
花の構造をしっかり理解したら、鉛筆デッサンはなるべく細かい線で描きましょう。濃度の高い色の花のデッサンは、FからHぐらいの濃さの鉛筆で仕上げ線を描いても構いませんが、黄色やオレンジの場合は2Hぐらいの硬めの鉛筆で、色がグレーに見えるような細かいデッサンをしましょう。こうすることで、彩色した時に鉛筆の色が黒くならず、優しい色に仕上がります。

急ぐ時の彩色方法

よく教室の授業中に「花は終わりそうだったので、とりあえず急いで描きました」という言葉をよく耳にします。急ぐ時の「とりあえず」絶対にいけません。必ず後々の事を考えて作業しましょう。ハイビスカスは1日花なので、急ぐ時の手順をご説明します。

まずは、デッサンです。花は急いで描く場合、花だけではなく葉や葉柄の付き方なども、細かく描いておき、急いで描かなくてもいい葉は、どのような大きさの葉がどこについていたかが分かるように、おおまかな線で描いておきます。このときの線は「おおまか」であって「おおざっぱ」ではありません。大きさや位置がわかるような線を描いて下さい。(図1)

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図1:メイン画のデッサンの様子。下の方の葉はおおまかに描かれている。

そして彩色です。花は急いで描くからといって、花だけ彩色してしまうと、奥行きのない絵になってしまいます。花と重なり合って、花より奥にある葉は、花と同時に彩色しておきます。それ以外のところは後で彩色するので「ぼかして」おいて、後で続きの作業が出来るようにしておきましょう。(図2)

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図2:花と、花より奥にある葉は彩色した状態。

さぁ!葉を描きましょう

物体の立体感は、デッサンと彩色の作業がともにそろって、初めて表現されます。ハイビスカスの盛り上がった葉の表現は、彩色だけでは出来ないのです。まず、デッサンで立体感を出すコツは、側脈の描き方で決まります。通常の葉脈と違い、立体的に上下に角度をつけ、分岐している側脈を正確に表現することで、立体的になってきます。(図3)

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図3:葉のデッサン。側脈に注目する。

彩色

彩色は葉の全体的な向きと形を考え、その上に屏風が載っているつもりでします。影の向きが分からない時は、白い画用紙を屏風状に折り畳んで、光を当ててみましょう。光と平行になっている面は影にかり、光が垂直にあたる面は明るく見えることがわかるでしょう。(図4)

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図4:屏風に光を当てた時の様子

この影を追いかけて彩色する事で、葉の立体感の表現につながります。
(図5,6)

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図5:下塗りした状態

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図6:半分だけ本塗りした状態

あとがき

今回、皆さんにお見せできた完成作品は1点ですが、途中経過の作品とそれ以外の作品も含めて同時に3作品を描きはじめました。この絵はもう3回目の夏を迎えますが、優先順位が分かればじっくり描く事が出来るようになりますので、今回の描き方をぜひ覚えて下さい。

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