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第14回ーパンジーを描く

第14回ーパンジーを描く

大小豊富な花型、色相の全てを網羅する程の色数、シボリ、ツートン、ポイント等の変化のある柄。園芸植物が持つ美しさの宝箱「パンジー」。重ね塗りと白い絵の具の効果的な使用法を考え、ビロードのような質感表現に挑戦します。

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2種類が3枚で1組

まずパンジーを描くにあたって葉を良く見ると、2種類の形がある事に気が付くでしょう。一般的に切れ込みの深いヒレのようなものが付き小さい方が托葉で、この2枚とその間に挟まれた葉と合わせて3枚で、1組の葉と考えデッサンします。ただ葉が込み入っている事が多いので、必ずしも葉の表現がうまくいく構図になるとは限りません。その場合は上の作品のように線描を余白に加えても良いでしょう。まず構図を理解してから描く事が、より写実的な表現に繋がります。

丸は2本線、四角とかまぼこは3本線

茎や葉柄、花柄をデッサンする時にいつも2本線だけで描いている方はいませんか?デッサンは形の変化を、彩色は色と影を表現するのが基本ですから、パンジーの四角い花柄と葉柄の基部のかまぼこ型は3本線でデッサンします(図1参照)。

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パンダの様なおじさんの様な

パンジーの魅力は個体ごとに色々な特徴がある事ですが、花とにらめっこをしていると、パンダの様な可愛い顔の中に、おじさんの様なハの字のひげがある事に気が付きます。実際には綿毛のように細かい毛の集まりですが、これは5枚のうちの2枚の基部に付いています。前項でも述べたように、形の変化はデッサンで表現しますので、花弁、距、蕊、がく等1つずつ丁寧に描きます。

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彩色は暖色系から寒色系へ

パンジーの場合、花以外の部分は他の植物と技法上の違いは特にありませんので、皆さんは容易に描ける事でしょう。しかし、花の彩色が絵の良し悪しを決めると言っても過言ではありません。まず、透明水彩の画材としての性質をよく考え、下地の色を慎重に選びます。下地の色は、次に塗る色のボカシをやり易くするのと同時に、発色を良くする効果もあります。ですから特に濃色のパンジーを描く時は、いきなり濁った濃い色は塗らず、驚くほど綺麗な色から塗り始めます。おおかたの場合は、黄→橙→ピンク→赤→紫→青というように暖色系から寒色系の色に徐々に移行しながら彩色していくと、暗く濃い色なのに発色の良い、リッチな色彩表現になります。(図2のカラーパレットを参照)

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①~④は花の地塗り。⑤、⑥は葉の地塗り。⑦~⑫は花の模様。⑬~⑲は葉の陰影の色。⑬、⑭は同じ色を2,3回重ね塗りします。⑮~⑱も同じ色を4,5回重ね塗りします。

光は紙の白、反射光は絵の具の白

通常植物画を描く時、白は白抜きーつまり紙の白を生かして描きますが、これはあくまでも原則です。特に初心者の方は、白を使っても良いと思うと何処にでも使ってしまい透明感の無い絵になってしまうので、ほとんどのお教室では白は使わないように指導しているようです。これはあくまでも私流ですが、入射光には使わないで、反射光のみに白い絵の具を使います。反射光は影を中心に入射光の反対側に出ますので、まず図2の⑩番の色を影のところに塗り、⑪番を明るいところに塗り、⑩番の上に白を塗って、水筆で下の色と白を混ぜるようなつもりでぼかすとビロードのような質感になります。この技法はアオツヅラフジやシャリンバイ等にも応用が可能です(作品AとB参照)。
反射光がどこに出るのかを理解する事は大変難しい事ですが、失敗は成功のもとです。色々試してみて下さい。

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