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第10回ーフクシアを描く

第10回ーフクシアを描く

「天使のイヤリング」とか「女王のイヤリング」とか言われている
フクシアの花。
初めて見た時から、あの不思議な形に魅せられています。
最近ではホームセンターなどでも安価でさまざまな花が購入可能です。
いろいろな形、色、品種の違いを考えて描き分けをしてみましょう。



画像の説明

たくさんの数の中に隠された法則

フクシアは五千を超える品種があるとも言われ、現在でも二千を超える品種が交配に使われているとか....そのため、似たようで違う品種がたくさんあります。特に品種名はついておらず、シリーズ名のような形で販売されているものも少なくありません。今回私が描くフクシアは、「女王のイヤリング」。それぞれ花の色や形は違っても、同じタグ(名札)しか付いていませんでした。こんな場合は図鑑などで学名を追うのは難しくなります。ですからこういった植物を描く時は、細心の注意を払い観察をします。野の植物を描く時にフィールドワークが重要なように、ホームセンターや花屋でもフィールドワークをして下さい。その目的は、たくさんの同じ植物を観察するという事です。たくさんの同じ植物を観察していると、何か共通点が見えてくるはずです。その共通点こそが形態の特徴であり、描くべきポイントとなります。そして、ひとつひとつ植物の共通点が理解出来たら、次は相違点を探します。この相違点は小さいことが多く、気が付いてもなかなか絵に反映させるのが難しい点でもあります。しかし、この微差を表現出来ないと、園芸品種の品種ごとの違いを描くことはできません。

観察が上手な方は上達します

よく植物画の教室で「植物画と絵画は描き方が違うから...」という声を耳にします。しかし、基本的には描き方は同じです。植物画の場合、資料としての価値を上げるために盛り込まなければならない要素の限定はありますが、基本的な絵の描き方は一般的な写実絵画と同じです。ですから、写実絵画の上手な方は植物画も上手です。そして特に上手な方は、対象物を比率で見ることができます。このことが、植物画を描くうえでも、とりわけ品種の違いを表現するうえで、大変重要な能力となります。

プロポーションを見ることは観察と同じ

対象物を比率で見ることが品種の描き分けに重要であると申しましたが、具体的な例で見ていきましょう。まず、花の長さと幅にそった四角形を描いてみます。そして子房、がく、がくの裂片、花弁、めしべの長さや幅に合わせて罫線を引いてみます(図1)。そうすると、それぞれ比率の違う花の形が見えてきます。こうやって比率を見ながら形を見ることを、絵画用語で「プロポーションをとる」とか「見る」とか言います。葉も同様にしてプロポーションをとります。葉の場合は鋸歯の形状にも注意を払います。


画像の説明

色の組み合わせはまるでファッションショー

フクシアの花は、色もたくさんの種類があります。ぱっと見ると白からピンク、紫へのワントーンの色合いですが、良く見るとピンクひとつとっても、「オレンジ色を感じるピンク」、「青味のあるピンク」、「赤味のあるピンク」など、いろいろなピンクがあります。そしてまるで女性の洋服のように、ブラウス(がく)とスカート(花弁)の色の組み合わせが何通りもあり、スカートの形もタイトやギャザーなど、いろいろな形をしています。葉の色も同様に見てみると、花が「青味のあるピンク」だと、葉も「青味のある緑」だったり、花が「赤味のあるピンク」だと、葉脈や茎が赤味を帯びていたりします。花と葉の色は相互に関係がありますので、同時に観察すると良いでしょう。

あとがき

最後に豆知識をひとつ。フクシアは梅雨の時季にさし芽すると、増やすことが出来ます。どんどん増やして、美しいイングリッシュガーデンによくある、大きなハンギング仕立てのフクシアを作ってみて下さい。

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