2025年タイトル花
2025年タイトル花
12月のタイトル花

折に触れて紹介してきたお気に入りの作品ですが、アーカイブを確認したところ、タイトル花では一度も紹介していなかったようです。
ヘレボルス・ニゲル......これこそが英名クリスマスローズです。
日本では一般的にクリスマスローズと呼ばれているものの多くは2月ごろに咲く英名レンテンローズなのです。「レンテン」とは復活祭-スターに由来する言葉のようです。
しかし、このヘレボルス・ニゲルがクリスマスの時期に庭で咲いたのは一度しかありません。ほとんどが1月だったように思います。だったというのは、このところの気候変動で夏を越すことが出来ませんでした。一時は株も大きく子供たちも増えたので里子に出して、我が家の親株が絶えた後は、里子の子株を分けて頂いたりしましたが、やはり近頃の暑い夏に溶けてしましました。今度もしもお迎え出来たなら、クリスマスローズでもレンテンローズでもなくニューイヤーローズと呼びたいと思います。
画:ヘレボレス・ニゲル 吉田桂子
文:吉田桂子
11月のタイトル花

一見、なんの変哲もないパフィオペディルム。
ここでも良く見てください。このパフィオペディルムの葉!!斑入りなんです。
本来、葉に斑があるパフィオペディルムはとても高価なものです。
しかし......当然!?ながらこのパフィオペディルムはさほど高価なものではありませんでした。何故かわかりますか?
この謎解きのためにはパフィオペディルムを含むラン科植物の育成サイクルを知ることが大変です。ほとんどのランは一番新しい株や、バルブに花を咲かせます。樹木で言う一年枝のようなもので、毎年新しいバルブを......
パフィオペディルムの場合は、左右互生の葉、数枚で構成されている新株の茎頂から花芽を出すのです。ですから、この個体に関して考えると、花をつけている株が一年生で斑の入っている様は二年生......つまり前年の株となります。このことが何を意味するのか......もうお解りかと思います。
高価な葉に斑が入るパフィオペディルムは安定的に毎年斑が入った葉を出し株を形成します。しかしこの個体は昨年は斑入りでしたが、今年は通常の無地の葉に戻ってしまったということなのです......残念......
昔は良くプラントハンターと言う言葉が使われましたが、今の時代、環境への配慮などからあまり使われなくなりました。それと同じく高価か安価か、レアか凡庸かなんて植物画家にとってはどうでも良いこと。
目の前にある植物は全て美しい......そう思います。
画:パフィオペディルム 吉田桂子
文:吉田桂子
10月のタイトル花

このバラの名前はたぶん、シルバーライニングです。1958年にイギリスで発表された品種で強い香りを出し、直立性の様立ちとあります。
一番初めにたぶんと言ったのは、実はこのバラの品種名は正確にはわからないからです。私がまだ小学生の頃ですから、1970年代の事と記憶しています。母が庭に黒いバラを欲しがったので父がバラの苗を買ってきました。そして花が咲くとなんとこの花だったのです。
どこから見ても黒バラではありません。しかしこのバラは毎年うっとりするほどの良い香りを出しながら花を咲かせ、後に我が家の庭にやってきた黒バラよりも大切にされていました。
あまりに大きく美しいバラでしたので、ご近所の方にも見て頂きたいと父が移植をすると、恥ずかがりやだったのか年々弱くなり、ついに枯れてしまいました。
しかしこの作品が描けたと言うことは、四半世紀に渡り私たちを楽しませてくれた事になります。今となっては名前も分からずじまいですが、色々なバラ図鑑から推察するとこの品種名ではないかと思います。
いつかもう一度この品種の香りを楽しみたいものです。
画:バラ・シルバーライニング 吉田桂子
文:吉田桂子
9月のタイトル花

セントポーリアの開花期は盛夏を除く通年と言われている。
確かに現在我が家にいるイワタバコ科の植物たちはなんとなく気が付くと
花を咲かせている。
この科の植物たちはたいてい葉や茎に沢山の産毛がある。茎や柄が髄質でまるでフキの柄の様な質感なのだが、こう言う植物には水のやり過ぎに注意が必要なのだ。
暑さ寒さにも弱く、18度から25度くらいが適温で、直射日光の当たらない明るい窓辺が好きとまるでお姫様のような植物なのだ。
しかし人間が快適に感じる室内環境と似ていると言われているので人間の方がお姫様なのかもしれない。
例年、八重桜が咲き始めると耐寒性のない植物を屋外に出していたが、昨年は酷暑で葉焼けを起こす植物もあった......なので今年からは全て室内で管理することにした。春と秋の植物の出し入れの手間は省けたがお蔭で室内に植物園ができてしまった。
画:セントポーリア 吉田桂子
文:吉田桂子
8月のタイトル花

アンスリウム......カタカナ表記はこうなるらしい。昔はアンセリウムと呼んでいた気もする。それとも有名歌唱の歌詞のせいだろうか......私の中ではこちらのほうがしっくりする。
アンスリウムと似ている植物でスパティフィラムがある。どちらもサトイモ科の植物だが株立ちや育成環境が違うようだ。
スパティフィラムには申し訳ないのだが、私的にはアンスリウムが好きだ。
肉厚でつややかな苞、肉穂状の花序には時にグロテスクとも感じられるほどの実を着ける。
アンスリウムの葉は根生している様に見えるが、実は茎があり、葉の付け根から気根を出す。おそらくこの姿も私が好きなポイントなのだ。
ランも空中に根を出す種がある。根は水分や養分を採りこむための物だから別に地中になくてはならない訳ではないのだ。
植物観察をしていると、いかに自分が固定概念に縛られ、常識と言われる大多数の意見や考え方に影響を受けているのかと気づかされる。
常識や善意の同調圧力と無関係の植物たちを時にうらやましく思ってみたりもする。
画:アンスリウム 吉田桂子
文:吉田桂子
7月のタイトル花

画像だと分かりにくいかもしれませんが、この花はとても小さなお花です。
植物体全体が直径10cmの円の中にすっぽりと入ってしまうくらいの大きさなのです。
私が描いた個体は栽培品なのでより小さいかもしれません。
植物園などのネット画像を見るともう少し花柄が徒長している個体が多いようです。
スイスアルプスの山々に原生している植物で、夏に青い花を咲かせます。花色の青も透明感のないしっかりとした青い色で、ヨーロッパでは「魔女の爪」とも呼ばれているそうです。
「爪」と呼ばれているのは何だろう?と考えてみるに、どうも花ではなく葉のような気がします。リンドウ科の植物ですが日本でよく見かけるリンドウの葉のような気がします。リンドウ科の植物ですが、日本でよく見かけるリンドウの葉と違って、その葉はまるで多肉植物のようにぷっくりと厚く先が少しとがっているからです。
いずれにしても良い意味ではなさそうですが、近所の小学生達に「魔女の家」と呼ばれている家に住んでいた私には親近感がわいてしまいます。
画:ゲンティアナ・ベルナ 吉田桂子
文:吉田桂子
6月のタイトル花

この作品のサインに日付がありません。しかしこのサインは画家として一本立ちした後のサインなので、おそらく1999年~2001年頃の作品かと思われます。当時は本当に多くのランのボタニカルアートを描きました。そのランもとても地味ではありますが、ゲットウなどのショウガ科の植物を思い起させる様な雰囲気があります。ランの中でも夏咲きの品種だからでしょうか......白い肉厚の花だからかもしれません。
コクレアンテスは主に中央アメリカから南アメリカ大陸に自生する4種のランで構成されています。個性的な花を咲かせる品種が多く、側花弁がグリーンでくるくるカールするエクアジェネラや不思議な色相のディスカラー等......私好みの花が多すぎます。またいつか出会ったら是非描いてみたいと思うラン科の中の属のひとつです。
画:ラン・コクレアンテス・マルギナタ 吉田桂子
文:吉田桂子
5月のタイトル花

以前......そう約10年前まで我が家の庭には日本クマガイソウがありました。
もともとは数本の鉢植えを頂いた事から始まり、ひと頃は数十本の群落となって咲いていました。しかし、気候変動の影響から逃れられず、10年ほど前に花のない茎を2本出した翌年からは遂に1本も芽を出さなくなってしまいました。
さて......この作品......中国クマガイソウという名札を付けた栽培品を購入して描きました。よく園芸店で売られているクマガイソウはタイワンクマガイソウと呼ばれている3品種です。側花弁もピンク色でリップもピンクが強く全体的に可愛らしい印象の植物です。それと比べるとこの中国クマガイソウの側花弁はどちらかと言うと日本のクマガイソウに似ていますが、唇弁のピンクが濃く、我が家に居たクマガイソウとも少し違う気がします......残念ながらクマガイソウは1本に株分けしてしまうと育てるのが大変難しいです。
分かってはいましたが、どうしても描きたくて園芸店から連れて帰って描いてしまいました。しかしこうして絵として命を残せたから少しは罪が少なくすんだでしょうか......
画:中国クマガイソウ 吉田桂子
文:吉田桂子

今年も庭のムラサキケマンが咲き始め、なんとなく以前描いていたミヤマキケマンの花のことを思い出しました。
この作品は礼文島の山道で描いた作品です。
坂道を下りきり、さあここから登りという道の一番低い所で、そこは林縁から少し水が滲み出ており、しっとりひんやりとした場所にこのミヤマキケマンが生えておりました。
ジロボウエンゴサクやムラサキケマンなどは身の回りでも良く見かけるけれど、黄色いケマンはエゾエンゴサクと共に珍しいのではとその時は思いました。
そしてしばらく経ったある日の事......私はお教室の帰り道で池ノ上という駅のホームにぼんやりと立っておりました。
「下を向いて歩こう!」は植物画家のあるある言葉ですが、線路脇は特に(私だけかもしれませんが......)興味をそそられます。
線路レールの下にあるジャリ石が終わると線路脇には水はけの為、側溝があり、あまり深くはない側溝の中や脇にはチョロチョロと雑草が生えていました。でも「おやっ......」何かいつも見慣れた都内の線路脇とは違う形の葉と黄色い花を目の端で捉えました。思わずホームのはじの方に歩いて行ってみるとそれはキケマンでした。礼文島で見たキケマンよりも葉も生き生きとしている様に見えました。
今から思えばあれは礼文島で見たケマンと同じではなく、平野部でも生えるキケマンだったと思います。でもその時はゴールドラッシュでもきたかのような興奮を覚えました。あれから更に時が経ち、池ノ上駅に行くことはなくなってしまったけれど線路脇のキケマンは今年も黄色い花を咲かせているのでしょうか?......
画:ミヤマキケマン 吉田桂子
文:吉田桂子
3月のタイトル花

カタセタム・テネブロッサム
以前カタセタム・テネブロッサムと、何だったか忘れたのだがもう一種と発表したら、学名が違うと指摘を受けたことがありました。
テネブロッサムと交雑したら黒花のはずと言われました.......
「でもタグどおりだからな~」
その時たまたま私が不在でお話を伺うことが出来ませんでした。
蘭は不思議な植物で育種から栽培家に渡った一鉢が全く別人?いや別物か.....
と言う様な花を咲かせた画像を拝見しました。なのであの時の作品はタグ通りなのではと思っています。
時にはこの作品......以前......今から2,30年前は蘭の花ばかり描いていました。とりわけカタセタムは大好きで、これは少し小ぶりなテネブロッサムです。通常のテネブロッサムよりバルブがぷっくり丸くて可愛らしい姿をしています。
蘭は一鉢、一鉢に名前をつけて愛でる習慣があります。
しかし、昔の時計のCMで岡本太郎さんが「名前なんて(中略)記号にしかすぎない」と言っていた。矛盾するようだが本当にそうだと思います。
その一輪の花が美しければ良き。
画:カタセタム・テネブロッサム 吉田桂子
文:吉田桂子
2月のタイトル花

随分前の作品です。
古いフィルムを引っ張り出し「この花の種名は何だっけ?」と考える。
すると空から「フラバ」という言葉が降りてくる。
「そうそう、フラバって黄色って意味だもんね!」と思う。
「で......属名って何だっけ?」と更に考える。
「小型なのでエピデンドラム?」
「いやいや花の型が違う......」
「あ~ひょっとして......」
また空から「レリアカトレア」と言う言葉が降りてくる。
ネットで画像検索すると......
「あった~~~~」
今はカトレアを分類している人もいる様ですね。
昔はレリアカトレアは種が少ないと言われていたので
ひょっとすると包含されてしまったのかもしれませんね......
DNAの分類が植物画界では当然となりましたが、なかなかついていくことができておりません......
まあ分類は植物の先生方にお任せして......
私は画家だからね......と勝手な言い訳をしてみる。
今日この頃。
画:レリアカトレア フラバ 吉田桂子
文:吉田桂子
1月のタイトル花
パンジー2種

また新しい年がやってきました。
新しい年、私の年に相応しい作品をと思い、この作品を選びました。
この作品は私がまだ植物画家として活動する前の作品です。
この頃はまだ、故佐藤廣喜先生の門下で植物画を学び始めたばかりだったように記憶しています。2種類のポット苗のパンジーを教室でいただいて描きました。
今から見ると絵としては良いけれどボタニカルアートとしては「イマイチの作品だな......」と感じます。「見たままをただ描いただけの作品」という印象を受けます。
厳密に言えばまず「見たままで描けるほど絵は上手くない」という事でしょうか......よくお教室でも「ボタニカルアートは見たままを描いてはいけないんですね」という質問を受けます。しかし「見たままを描く」ほど難しい事はありません。なのでそんな事は出来ると思っても、やろうとしてもいけないんです。
ボタニカルアートはまず「形態の説明」が一番大切です。技法的には鉛筆でその説明をすべて完了しなくてはなりません。そこが一般的な写実絵画とは大きく違います。その点を踏まえて見るとこの私のパンジーはまだまだな作品でした。
一年の初めにこの作品を選んだ理由......
前述の様にボタニカルアートとして正しく描くという事はもちろんなのですが、この頃の私の気持ちをもっと大切にしたいなと思います。
ただ目の前の植物を必死に描いていた頃の気持ちです。
ボタニカルアートを楽しくそして時に厳しく自分らしい作品を描きたいと思う一年の初めです。
画:パンジ2種 吉田桂子
文:吉田桂子


