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額装に差が出るマットの役割3選

額装に差が出るマットの役割3選

どんな絵画作品でもそうですが、壁などに飾られてはじめて「作品」と言えるものになります。そしてその為に額装されます。「額装されて初めて作品と言えるものになる」という事は「額装によって作品の良し悪しが変わってしまう」という事を意味します。私自身も額装を大変重要視しています。その作品のムードやメッセージ、さらに所蔵される場所にどう飾られたいか等々...色々な事を考えて額装を決めていきます。20014年10/15日から新宿小田急百貨店にて行われる、日本ボタニカルアート展向けの作品額装を例に、額の選定からマットの効果効用についてご説明してまいりましょう。

大輪 菊

まずこの作品は、菊と言うと和風に思いがちですが、洋風の額装にしたいなと思いました。天井格子にシャンデリアがかかっているような洋館のように、和洋折衷のゴージャスなイメージです。手持ちの額で似合った物がありましたので、まず額はこの額に決めました(写真上左)。そしてマットを抑えめのゴールドにするか、思い切ってビロード状のワインレッドにするか迷いました(写真右上)。ワインだと絵に対して強く、ゴールドだとぼやけるので、まず外側のマットは無難なゴールドにして、下側のマットにさし色でグリーンを使い、少ししまった感じにすることに決めました(写真右下)。実際のマットの形は外側は四角、内側はアーチ状にカットしてもらい、余白のバランスをとる予定です。出来上がりはきっと面白い物になるでしょう(写真下)。
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ブドウ ’リースリングリオン’

この作品は2つのイメージのどちらにするか迷った状体で額を選び始めました。一つ目のイメージはブドウの樹皮からくるナチュラルなイメージ、そしてもうひとつはヨーロッパのワイナリーに飾られるようなイメージです。それぞれのイメージに2つずつ、計4つの額の候補を絵に合わせてみました(写真上左)。その中から二つにしぼり込み、マットや面金を合わせながら、どちらにするか検討しました(写真上右、写真下左)そして結局初めに手にとったゴージャスな白樺のような額を選ぶことにして、再度マットや面金を見直しました。初めは額と同じような素材で作られた面金を挟むつもりでしたが、少し重たくなってしまうので、代わりにダブルマットにして下段に面金の代わりになるゴールドのマットを入れる事にしました(写真下右)。
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アンセリウム

この作品はほとんど迷わずに決まってしまいました。何故ならフレンチシックなイメージにすると初めから決めていたからです。カラーテーマも白、サンドベージュ、パステルピンク、パステルグリーンの中からとしていましたので、イメージに合う額がすぐに決まり、中のマットはピンク系ではイメージに合うピンクが無かったので、パステルグリーンで決まってしまいました。きっとかわいい額装になるはずです(写真下)。
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このように額縁の素材や大きさ選びが大切なことはどなたでも理解し易い事だと思います。しかし、マットの重要性んび気がついていらっしゃる方はなかなか多くないようです。

額と絵の間にある厚紙のことを一般的に「マット」と呼んでいます。もともとマットは作品が額のガラスやアクリル板に密着しないようにするためのものですが、額と作品をつなぐ重要な要素のひとつであることを忘れてはなりません。

マットがもつ3つの役割

私が考えるマットは大きく分けると3つの役割に分かれます。一つ目は額としてのマット。二つ目は作品としてのマット。そして三つ目はアートとしてのマットです。それぞれの場合は作品の余白の大きさや、額のサイズ(規制かオーダーか)などの条件によって大別されます。では、それぞれの役割について細かく説明していきましょう。

(1)額としてのマット

このケースになる場合は作品の余白がたっぷりある場合、額縁が細い場合にとる方法です。

まず、余白がたっぷりある場合は作品が間延びして淋しく見えがちです。そんな時は作品とマットが分離する様にします。テクニック的にはダブルマットにする(下段をカラーマットにして5mmから7mmくらいの細い幅の差を上段につける、写真下)面金を付ける(写真上左)カラーマットにする(写真上右)などの方法があります。そして額縁が細い場合は、額とマットの色が繋がる様にして、マットによって「額縁が太く見える」ようにします。この時、色だけでなく、表面感や素材感のあるマットを選び、額の様な質感をマットで作っても良いでしょう。
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(2)作品としてのマット

この考え方でマットを作る場合は、余白が少なく画面一杯に絵が描かれていたり、額縁が幅の広い場合に用いますが、どちらかと言えば苦肉の策として用いられる事が多い方法です。マットを白やベージュ等の画用紙に近い色にして絵が窮屈に見えない様にします。この時重要なのは色だけですので、シングルマット、ダブルマットどちらでも良く、淋しい印象になった時は表面に素材感のあるマットを選ぶと良いでしょう。どうしても細い額に入れなくてはならない時は、(1)と(2)のテクニックを併用します。まず、ダブルマットを選択して、通常の幅より上下の窓の大きさの差をつけて下の段のマットもたっぷり見える様に作ります。そして下の段のマットは画用紙に近い色を選び、上の段は額をサポートする様な色を選びます。こうすることで額、作品両方の良い所を生かしながら額装する事が可能になります。
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(3)アートとしてのマット

皆さんは「フレンチマット」と言うマットはご存知でしょうか?洋服の世界でフレンチカラー、フレンチカフと言えば、幅広の大きく装飾的な物を意味しますが、マットにおいても同様で、「額の中に額を作る」という考え方から生まれた、より装飾的なマットを意味します。代表的な物は細かく裂いたマーブル紙を貼り付けたりゴールドやカラーでラインを引いたりしているものです。ルドゥーテのアンティーク作品などに良く見られる技法です。ヨーロッパでボタニカルアート作品を購入する際、額には入っておらず、マットのみ付いている場合が多くあります。マットは作品に合わせてあり、額は購入した人がインテリアに合わせて作る場合が多いそうです。以前、良く行ったイタリアはミラノのお店は、フレンチマットを作るために、作品をフィレンツェまで送って、作品の色を使用したマーブル紙を作ってもらって額装をしていると言っていました。イタリア国内でマーブルを漉く職人はフィレンツェにしかいないのでそうしているとの事でした。一度見に行きたいと思っていますが、なかなかイタリアまでは....そしてオーダーだと高価なフレンチマットですが、あきらめる事はありません。自分で作る事も出来ます。私の場合はマーブル紙、テープはイタリアで購入したものですが、ラッピングペーパーや柄入りマスキングテープなど工夫次第でいくらでもオシャレなフレンチマットが出来るでしょう。
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(4)最後に注意すべき点

これまで説明で「いかに作品をゆったり見せるか」という事が重要か気が付いて頂けたかと思います。しかし私も最近気が付いたマットの盲点があります。それはマットの幅はゆったりしていれば良いという訳ではありません。なぜなら幅が不自然に広いマットは額との境界線の四角と作品との境界線の四角との大きさの比率が大きい事を意味します。そうすると、それぞでの間に遠近が発生してしまい、人間の目には作品が遠ざかり、小さく見えてしまいます。また、タテヨコの比率によっても錯覚が起きることもあります。あくまでもちょうど良い大きさにするという事が大切なのです。

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