第43回ージャーマンアイリスを描く
第43回ージャーマンアイリスを描く
春が終わり初夏を迎える頃、
ジャーマンアイリスは咲き始めます。
日本のアヤメと違い、豪華で優雅なその姿は見る者の心を惹きつけます。
今回はその花に焦点をあてて描いてみましょう。
一般的な花の絵とボタニカルアートの違い
一般的な花の絵とボタニカルアートの違いの一つは
「ボタニカルアートは目的のある絵画である」ということだと
私は思っています。
私自身も図鑑用で描く時を個展用で描く時では、描き方が異なります。
皆さんも用途によって、描き方を変えても良いのではないでしょうか?
例えば、ボタニカルアートのコンクールに出品する作品は、その植物の分類上の特徴を全て画面に盛り込まなくてはなりません。
しかし、自宅のリビングや空いている壁にちょっと掛ける作品をと考えてみた時、花一輪、葉一枚の絵でも良いのではないかと思います。
ただ「何となく描かなかった」というのと、「意図して部分描く」というのは大分違います。
今回のジャーマンアイリスは、大きな植物です。この姿すべてを描こうとすると大きな作品になるのはもちろんの事、技術的にもかなりハードルが上がってしまいます。
ですから今回は、ボタニカルアートが別名「花の肖像画」とも呼ばれている通り、ジャーマンアイリスの花だけを描いてみましょう。
デッサンのポイント
花弁にある羽衣紙で作ったような繊細なひだや折れ目は、デッサン段階で描きます。デッサンの段階で描きます。彩色後に目立たないよう、細い線で描きましょう。
彩色の手順
①彩色では、まず地色となる黄色を塗ります。
花色は光によって変化します。黄色みの感じられるところだけ、淡く彩色します
②花色の変化は早いので、メインとなる花を少し彩色して、重ねる色の感じをつかみます。
③少し色の感じがつかめたら、変化の早いつぼみと枯れた花を彩色します。
④今回の様な重なり合いの少ない構図は、急ぐ部分から彩色してもバランスが崩れません。仕上げまではせず、あらかた彩色を済ませます。
⑤ジャーマンアイリスの特徴である模様など、細かい部分を描き込んでいきます。
⑥花茎と透明感のある苞(ほう)の、質感や色を表現します。
つぼみと枯れた花も併せて完成させます。
⑦最後に花弁のビロードのようなところに白色を塗ると、豪華絢爛に仕上がります。私はこの技法を勝手に「練り込み」と命名しています。
最後に
今回は花に焦点を当ててご説明しましたが、描ける方は花後に掘り上げを行い花とは対照的な、力強い地下部の姿(根茎)を描いて下さい。
根があって初めて花を咲かせるのですから、まさしく縁の下の力持ちです。