第37回ーアンスリウムを描く
第37回ーアンスリウムを描く
南国の花のイメージがあるアンスリウム。
意外にもほぼ通年で切り花などで入手できます。
最近では珍しい品種の鉢植えなども大きな園芸店へ行くと入手可能です。
光沢のある仏炎苞(ぶっぽうえん)はデッサンで正確に描き、質感を表現しましょう。
アンスリウム Anthurium sp.(サトイモ科)
分類上の特徴をとらえる
皆さんもご存じだと思いますが、ボタニカルアートはただの「花の絵」ではありません。ですから構図を決める時は必ず 分類上の形態の特徴をとらえて描くことが大切です。「ここがキレイ」とか「心象を表現したい」と言う考えは、必要な形態の要素を全て盛り込んだ後に加えるかどうか考えましょう。
私は、構図に盛り込むべき要素を考える時、必ずモチーフの植物の近縁種や同属の植物を沢山観察します。似たような植物をたくさん見る事で共通点や相違点が見えてくるはずです。この点こそがボタニカルアートに盛り込んでおかなくてはならない要素なのです。
アンスリウムのデッサン
アンスリウムは茎から空中に根を出しながら、上へ上へと成長します。
そのため構図に根を入れると、生き生きとした作品になります。もちろんサトイモ科の植物に特徴的な葉鞘(ようしょう)や葉脈、肉穂花序(にくすいかじょ)に仏炎苞が良く見える視点で描く事も重要です。
アンスリウムの彩色
では、彩色の説明に入りましょう。
①まず緑色に見える部分は、全て同色で淡く下地を塗ります。この時、光沢のある場所は紙の白が残る様にします。
②次はそれぞれの色で陰影をつけます。葉身は新しい葉と古い葉の色の違いを表現します。葉柄、花柄はそれぞれ明るいグリーンで立体感を表現しましょう。根や甘皮も込み入っていますので判別がつくうちに淡く彩色しておきます。
③さらに細かい葉脈などを表現しながら、奥にある葉を彩色します。
④その後、手前の葉を彩色していくと、自然に奥行きが出てきます。
⑤絵が仕上がってきたら、落ち着いて仏炎苞と花序を彩色します。
仏炎苞の光沢感は「彩色しない」ことでしか表現できません。45°方向に強い光源を置いて、明るい部分を塗りつぶしてしまわぬように注意して彩色しましょう。
⑥花序はサッカーボールのように三角、六角のユニットが集まって形成され、小さなトウモロコシのような形になっています。ひとつひとつ絵の具を使って表現するのは難しいので、まず鉛筆でしっかりと描き、彩色は簡単にすませてしまいましょう。そして最後に根や新芽など株元を彩色し、細部を描いたら完成です。