第30回ートルコギキョウを描く
第30回ートルコギキョウを描く
花屋の店頭で比較的通年見かける花、トルコギキョウ。
ボタニカルアートを描く方なら一度は描いてみたい、一度は描いたことがある花ではないでしょうか?
形を基本通りにつかまえ、丁寧に彩色することで、白っぽい葉や縁取り模様のある花をやわらかく表現しましょう。
今回は例外的に
ボタニカルアートを描く時、切り花を描く事はありません。
なぜなら、切り花は花器などに生けることを前提で栽培されていることが多く、植物本来の自然な姿をしていない事があるからです。
そして、仮に自然な姿に近いものが入手できたとしても、水上げが悪いとすぐに枯れてしまい、描き終わらないうちに花がダメになってしまったりします。
そんなとき、便利は花がトルコギキョウです。「便利」なんて言ってしまったらトルコギキョウに申し訳ありませんが、トルコギキョウは通年で花屋に出回っている事が多いので、仮にデッサンだけでも最初の個体がダメになってしまっても、次に同じ品種を購入して本物を見ながら彩色することができます。このように切り花を描く際には、まず花屋に通年で入る花かどうかを確認してから描くようにしましょう。
花選びのポイント
切り花を買う時は以下の点に注意しましょう。
- サービス価格で提供されている花束は買わないこと
→花が古かったり、草丈や枯れた花を切り込んであることがあります。 - 1本売りの花を買う時も、下の方の葉や分岐した花などを切った跡がないか確認。
- もし切られている花を描く場合は付け足して描くか、切られている跡などをわざと描きます。
想像で絵を描くくらい難しいことはありません。なるべく良い花をじっくり選んで購入し、そして描くように心がけて下さい。
形のつかまえ方
まずは、花は回転体としてつかまえて描きましょう(図1)。葉は対生になった基部から描きはじめます(図2)。大まかに形がとらえられたら細部のデッサンをして、清書の線に描き直します(図3-1)。
花の彩色
ゼラニウムと同様で、縁に濃い色の模様がある花の場合は、まず白い花であると思って淡い黒で陰影をつけます(図3-2)。その際デッサンの時にも述べたように、花を回転体であると考えた陰影も彩色します。その後、花の基部に見られる縁、がくなどを彩色します(図3-3)。そして最後に紫の縁の模様やおしべ、めしべを彩色します(図3-4)。
図3-1 清書の線を描き直します。
図3-2 淡い黒で陰影をつけます。
図3-3 花の基部の縁、がくを彩色します。
図3-4 縁の紫の模様やおしべ、めしべを彩色します。
葉の彩色方法
トルコギキョウの葉は独特の質感をしています。
青白く粉をふいた様な質感で大変美しい表情をしています。この質感を表現するのには、まずは混色(色作り)、そして筆使い(にじみとぼかし)の技術が重要になります。
葉の色の混色方法
以前もご紹介しているかもしれませんが、青白い色の葉の色を作る時は、「青」と「白い」を分けて考えます。まずは「白い」は紙の白を生かして描きますので、絵の具の白を混ぜずにたっぷりの水で淡い色を作り彩色します。その際、エンピツの線の上までピッタリ彩色して下さい。塗り残しやはみ出しがあると淡い色で美しく仕上げる事が難しくなります。
そして青い縁の考え方ですが、これはいたってシンプル。青ければ青(プルシャンブルー)をサップグリーンの中に、いつもより多めに配合します。そして少し色がなま生々しいと感じるようでしたら、ミネラルバイオレットを入れると落ち着いた色相になるでしょう。
葉の質感表現
白く粉がふいた様な質感は、水彩絵の具のにじむ性質を利用して描きます。まずはたっぷりの水で溶いた淡い色と影の部分に相当する少し濃いめの色の2色をパレットに用意します(図4)。そして淡い色で陰影つけたら、絵の具が完全に乾燥しないうちに、少し濃いめの色を筆で置くようなイメージで彩色します。この時、必ず筆先でそっと絵の具を置いてください。
紙が濡れている状態なので、筆をいつも通りに動かすと質感が出ないどころか紙を傷める原因となりますので、注意深く彩色してください。
図4
最後に
茎の彩色の説明を忘れていましたよね。
茎はいつも通りです!!です。色は葉より少し青みを控えて、反射光を利用しながら丸みを表現しましょう。