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特別講義ー礼文島の花々

特別講義ー礼文島の花々

6月某日、稚内空港。初夏を迎える季節だと言うのに北の最果ては気温12度。身が引き締まるような寒さの中、フェリーターミナル行きのバスに乗り込みました。フェリーターミナルの待合室で、出航を待つこと2時間。曇天の下に広がる灰色の海を眺めながら、滞在期間の天気がおもわしくないことを知りつつも「晴れたらいいのになあ~」などとぼんやりと考えていると乗船を促すアナウンスが流れてきました。新しく建設された乗船用のタラップからスムーズに乗船。出航間もなく、乗り物酔いのひどい私は仮眠をとります。1時間半程して目を覚ますと、船の行く先には島の上方を霧に包まれた礼文島の姿が...諸事情により2年の間来ることが出来なかった礼文島に今帰って来たのです。

今回の植物画ウェブ講座は特別講義として、私の研究テーマである「礼文島の花々」を作品と動画を交えながらご紹介したいと思います。

サクラソウモドキ

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作品の中央で下向きに咲くピンクの五裂の花は名前を「サクラソウモドキ」と言います。植物には「何とかモドキ」とか「ニセ何とか」なんて名前が沢山あります。確かにレブンコザクラのように、キチンと横向きに咲かない花だけれども「モドキ」なんてひどすぎます。私が名付け親だったら、うつむき加減で控えめなこの花にもっとステキな名前をつけてあげたのに、なんて思ったりしています。

ホウチャクソウとオオバナノエンレイソウ

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九種湖の周りには散策路があり、春にはミズバショウやエゾエンゴサク、キジムシロ、夏にはセンダイハギやコバイケイソウ、秋にはホソバツルリンドウやヒョウタンボクの赤い実など様々な植物を楽しめます。

ちょっと前の話になりますが、2002年の夏に訪れた際に湖の周りを夕方散歩していると、珍しいホウチャクソウの花を発見!!花の先に丸い黒と白の縞模様がついた直径1cmぐらいのポンポンがついているではありませんか。おやっと思いながら近づいてよく見ると、それは閉じ始めた花の中から出られなくなった大丸花バチのお尻でした。あの丸花バチは無事に脱出できたのだろうか....事の顛末までは確認できませんでした。

一方オオバナノエンレイソウは初夏の林縁や林道脇など比較的良く見られる植物で、大きな白花が印象的です。2013年に訪れた際に、つづら折れの元地香深線脇の谷間に広がっていたエンレイソウの群落は現在道路の拡幅工事により埋め立てられてしまっていてみる事ができなくなってしまったのが残念です。

アツモリソウ

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上の薄いクリーム色のアツモリソウ(正確にはホテイアツモリソウの変異種)が言わずと知れたレブンアツモリソウです。この作品を描いたころはまだ観光で訪れる方も今ほどではなく少なかったために、スケッチしたり観察したり出来ました。私がこの作品を描いている時にちょうど某大学が個体調査に訪れていました。その中の先生らしき人に「あちらに1株咲いているカラフトアツモリもぜひ、描いてみて下さい」と言われました。そう言われて描いたのが下の作品、カラフトアツモリソウです。

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礼文島でこの花は、アツモリソウ群生地の中にただ1株(私が描いた株)だけ咲いてます。このカラフトアツモリソウのルーツには、諸説あるようです。私に描く事を勧めて下さった先生はこのカラフトアツモリソウのDNA鑑定をして、この花が外部から持ち込まれたものではなく、自生している事に確信を持たれたそうです。私は先生の言葉を信じて、礼文島の花としてこの作品を描いたわけですが、描きながらやはり「もしも、この花がずっと礼文島にいたのだとしたらどうして1株しかないのかしら?」という疑問に突きあたりしました。もし、この先生の話が本当だったとすると「昔は群落だったものが減りに減って、この1株になってしまったのかしら?」と思ったりします。礼文島は火山性の利尻島とは違い、白亜紀の後の古い地層の島です。オーストラリアのコアラのように、この小さな島に取り残されたアツモリソウ達は「クマガイソウVSアツモリソウ」の源平合戦のように、美しい戦いがあったのだろうか...なんて太古の昔に思いを馳せています。そんなカラフトアツモリソウですが今現在は群生地で見る事は出来ません。はっきりは分かりませんが、もしかしたら、交配を避ける為に花が開く前に摘んでいるのかもしれません。

最後の今回の礼文島の取材で訪れたアツモリソウの新しい群生地をご紹介しましょう。島の方々の長年のご努力が実り、アツモリソウの群生地は少しずつ広がっています。いつまでも大事に守っていきたいもにですね。

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