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春に紅葉?赤い若葉の謎

春に紅葉?赤い若葉の謎

ベニカナメモチ

桜前線も東北を北上中。ここ南関東も新緑が目に鮮やかな季節へと移ってきました。街のあちこちで新葉をつけた木々が目立ち始めた中、ある生垣がなんと真っ赤。まるで紅葉のようではありませんか!今回は春に紅葉?この赤い若葉の謎を調べてみました。

早速その紅葉した生垣を調べてみるとベニカナメモチ(レッドロビン)という植物で、春先に葉が紅葉し、冬に緑色となるバラ目バラ科カナメモチ属の常緑広葉木小高であることがわかりました。調べてみると意外に若葉の赤いものが多いこともわかりました。アカメガシワ、タブノキ、クスノキ、アセビ、新出猩々、手向山等のカエデの仲間やチャンチン、オオバベニガシワなど多数。このように春から初夏にかけて紅色の新葉をつける現象を「春もみじ」と呼ぶそうで、やがて緑色に変わってしまうそうですが、いったいなぜ、春に「紅葉」がおきるのでしょうか?

まず春の紅葉を調べる前に、なぜ秋に紅葉がおきるのか?ですが、それはまだ謎だそうです。有力な仮説としては、秋になると日差しが弱くなるため、光合成により得られるエネルギーよりも葉を維持するために必要なエネルギーの方が大きいので採算が合わず葉を落とすという考えだそうです。

そしてその際、植物は葉を落とす前に葉をつくっている有機物のうち養分として再利用できる物質を回収すると同時に光合成を行う葉緑体も必要なくなる為に分解されます。
この葉緑体内にある葉緑素(=クロロフィル)は分解される過程で植物にとって有害な活性酸素を作り、植物の組織を破壊してしまうそうです。
そこで必要になるのがアントシアニンという赤い色の色素です。
アントシアニンは葉緑素の分解過程で発生する活性酸素の生産を阻止することができる物質なのですが
ではなぜ、アントシアニンは活性酸素の生産を阻止できるのでしょうか。

葉緑素(=クロロフィル)は主に青色の光を吸収して活性酸素をつくり、植物の細胞組織を破壊していきますが、この青色の光を遮る事が出来れば活性酸素の生産を阻止することが出来ます。いっぽう赤い色素アントシアニンは青色の光をよく吸収します。つまりアントシアニンを合成することにより、葉が赤いフィルターで覆われたようになり、青い光を受けなくなるため、活性酸素の生産が抑えられ、十分に栄養を蓄え春に備えることができるようになるというのです。

では次に春の紅葉です。
この紅葉もやはりアントシアニンによるもので、秋の紅葉と同じだそうです。そしてその原因も秋の紅葉と同じく、まだ詳細はわかっていないそうで、各説色々あるそうです。軟弱な新葉の組織が強い日差しの紫外線によってダメージを受けるのを防いでいるという説、芽生えの柔らかい葉は虫に食べられてしまう恐れが高いので、葉緑素に多くの投資をしないという説、寒さから葉を守るという説もありますが、いずれにせよ植物が自らを守るための自衛手段であることはかわりません。
また、アントシアニンはポリフェノールの1種で我々人間にも大変有益な有機化合物で、植物への効用と同じく活性酸素の抑制効果は有名な他、ブルーベリーのアントシアニンが目にいい事や、そのほか血圧上昇を抑制、肝機能改善、毛細血管保護、血小板凝固の抑制、動脈硬化などの生活習慣病予防などの効果があるとされています。

ウスベニアオイ

ブルーベリーの他、アントシアニンを含む植物の例としては、
クワ、クランベリー(苔桃)、ボイセンベリー、スグリ(ベリーの一種、別名カシス)ハスカップ、ブルーベリー、ブラックベリー、プルーン、ビルベリー、アサイー、ブドウ、ラズベリー、イチゴ、ムラサキキャベツ(赤キャベツ)、ナス、黒米、黒大豆(黒豆)、黒ゴマ、有色サツマイモ(特にムラサキイモ)、ダイショ(ベニイモ)、アナスタシアブラック(ピーマンの一種)、ツバキ、小豆、赤たまねぎ、紅蓼、赤シソ、イワキベリー、ウスベニアオイ(ブルーマロウ)などがあります。
(写真は乾燥したウスベニアオイ)
植物が生きてゆくために必要な物質が生み出される過程では様々な化学物質も同時に合成されます。アントシアニンもそのひとつですが、この化学成分は植物科学(フィトケミカル)成分と呼ばれ、時としては医薬品のルーツとなって私たちの健康をも守ってくれる重要な物質になっています。

参考サイト
なぜ紅葉するのか森林林業・学習館
樹木の疑問と不思議Q&A
ベニカナメモチ
アントシアニン kotobank
アントシアニン wikipedia

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